共通アドレス帳が組織を変えた。JERAが「PHONE APPLI PEOPLE」で実現した“新たな企業文化の構築”
株式会社JERA
- 効果
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- 出自の異なる組織が“同じ土台”でつながる環境を整備し、統合後の協働を加速
- クラウド基盤でグローバル拡張にもスムーズに対応。国内外をつなぐ共通基盤を構築
- スマホ×クラウドアドレス帳で、“必要なときにすぐにつながれる”働き方を実現
2015年、東京電力フュエル&パワーと中部電力の燃料・火力事業の統合により誕生した株式会社JERA(以下、JERA)。統合の進展により急速に社員数が増加するなか、同社では2018年に「PHONE APPLI PEOPLE」(以下、PA PEOPLE。当時の名称は「連絡とれるくん」)を導入し、全社共通のコミュニケーション基盤としての活用を始めました。導入当初の経緯をよく知る藤冨知行氏および佐藤雄哉氏、そして現在のグローバルな運用実務を担当する杉村瞭太氏にお話をうかがいました。
導入前の課題:出身組織ごとの“別々のアドレス帳”が協働を阻む要因に
——まず、導入前にはどのような課題があったのでしょうか。
藤冨氏 JERAは50人規模から始まり、事業統合の過程で500人、5,000人と組織が急速に拡大しました。2018年当時、5,000人規模への統合を見据えるなかで、組織のコミュニケーションのあり方を刷新する必要を感じていました。というのも、東京電力出身者と中部電力出身者は、それぞれ出身組織のアドレス帳(電話帳)を継続して利用していたからです。つまり、事業統合後も、コミュニケーション基盤は統合されていないという状況でした。
──出身組織によってアドレス帳が分かれていたことで、どのような不便を感じていましたか?
佐藤氏 社員数も増えてきたなかで、社員同士の名前や顔は一致しにくくなっていましたし、誰がどんな役割を担っているのかも不透明になっていました。自分が利用するアドレス帳に不足している情報は、人づてに聞いたり、社内で連絡先交換をしたりして補足する必要がありました。
──そのような状況下で、アドレス帳統合の必要を感じられたのですね。統合を検討するなかで、どんな議論がありましたか?
藤冨氏 事業統合当時としては、「どちらかのシステムに片寄せする」という方法が定石だと言われていました。しかし、事業統合の趣旨として掲げていた“対等・互譲精神”を体現するためには、その方法は採用しにくいという背景がありました。それに、私たちは世界各国にグループ展開する未来を見据えていましたから、出身組織の文化にとどまるのではなく、 “新しい企業文化=第三の企業文化”を体現することが重要でした。そこで、「全員が同じアドレス帳を見る」ことを組織文化づくりの第一歩として位置づけました。
——なるほど、アドレス帳を起点に新しい企業文化の醸成につなげようという意識をお持ちだったのですね。
藤冨氏 そうです。当時は「たかがアドレス帳」と捉えられる向きもあり、多少の不便はあっても安価なものを利用すればよいと捉えられがちでしたが、私はそうは考えていませんでした。アドレス帳は、私たちJERAがこれから新しい企業文化を体現し、グローバル規模で事業展開していくうえで必須となる1つの基盤であり、しっかりと投資をすべき対象だと考えていました。
——強い信念が伝わってきます。その他、働き方の面での課題などはございましたか?
佐藤氏 働き方の面では、社員一人ひとりがスマートフォン(以下、スマホ)を持ち、必要時にすぐに連絡できる環境にしたいという強いニーズがありました。当時はPCで連絡先を調べて固定電話でかけるという連絡方法が基本でしたが、そこから脱却することで、仕事の柔軟性やスピードを高めたいと考えていました。そうすることで、企業競争力の向上にもつながると感じていました。
導入の決め手:過去実績より“未来の成長”を見据えた意思決定
——新しいアドレス帳を導入するにあたって、どのような点を重視されていましたか。
藤冨氏 当時、実績のあるオンプレミス型製品もありましたが、私はクラウド型の製品を使用することにこだわっていました。すでに前例や実績のあるものを導入すれば、社内からの反対意見も出にくいですが、それでは“未来”の課題には柔軟に対応できません。私たちJERAは、近い将来にグローバル展開を見据えていたため、他のサービスと連携が可能なクラウド基盤で、柔軟に拡張できる仕組みを導入したいと考えていました。
佐藤氏 当時はまだまだオンプレミス型製品が主流で、なかなか要件に適合するクラウド型のサービスが見つからなかった記憶があります。そんななかで、ようやく見つけたのがPA PEOPLE(当時、連絡とれるくん)でした。クラウド基盤での一元管理、スマホ対応、ゼロトラスト(※)をふまえたセキュリティ対策など、当社が望む将来像に堪えうる仕組みがそろっていました。
※ ゼロトラスト:「何も信頼しない」という原則に基づいて対策を講じるセキュリティの考え方。
──当時は、当社もクラウド型のサービスを提供し始めた時期で、導入実績が少ない状況でした。そんななか、お目に留めていただき幸いでした。
佐藤氏 導入の検討を進めるなかで、当時はまだ未実装だった「Microsoft Entra ID」(以下、Entra ID。当時の名称は「Microsoft Azure Active Directory」)との連携を実現してくださいましたね。それによって、Entra IDに登録している情報をPA PEOPLEにも同期することができ、効率的な運用が可能になりました。
──当時、ご要望をいただいて実現したおかげで、今では他の多数の企業においてもご好評いただいている機能です。
佐藤氏 それはよかったです。当時はありがとうございました。他にも、所属部署の兼務の最大表示数を増やすなど、当社の意見を積極的に取り込んで改修していただき、助かりました。
──こちらこそ、リクエストをいただきありがとうございました。お客様のお声をもとにサービスを進化させ続けることは、私たちが常に大切にしている方針です。PA PEOPLEを選んでいただいた理由は、他にもございますか?
藤冨氏 UI(※)が直感的で、アドレス帳として操作がわかりやすいというのも、重要なポイントでした。製品の“面がまえ”というのは、けっこう大切なんです。パッと見たときに、ああこれはこうやって使うツールなんだな、とわかる。それが、社内での利用浸透にもつながります。
佐藤氏 氏名検索だけでなく、組織名検索や組織階層ツリーからも人を探せる設計が魅力的で、社内でトライアルした際にも「使いやすい」と好評でした。当時、この点でも類似のクラウド型サービスは見つかりませんでした。
※ UI(ユーザーインターフェース):機器やサービスの、操作画面や操作方法のこと。
導入後の効果:“つながりの再構築”がJERAにもたらした新たな文化
——PA PEOPLE導入後、導入前の課題に対する効果はございましたでしょうか。
藤冨氏 現在はJERAグループ全体のうち、世界16ヵ国・約40社・約6,300人が、共通のコミュニケーション基盤を用いてスムーズにやり取りをしています。その意味で、導入当初に掲げたグローバル規模での「新しい企業文化の醸成」に確実に貢献できていると考えています。
──グローバル展開において、苦労された点などはありますか?
杉村氏 いえ、海外のグループ企業が次々と増えている状況ですが、大きな支障もなく、とてもスムーズに展開できています。クラウド基盤で運用しているため拡張が容易なことや、Entra ID連携ができるため管理負荷が小さいことなど、導入当初からグローバル運用を見据えていたおかげです。さまざまな問い合わせ対応をはじめとする国内外のやりとりが、共通基盤でシームレスにできるのは非常に助かっています。
──導入前に描いていた「一人ひとりがスマホを持ち、必要時にすぐに連絡できる」働き方は、社内にスムーズに根付いていきましたか?
佐藤氏 そうですね、経営陣も率先してスマホを使うようになり、現場でも浸透しました。今ではその働き方が当然になっています。あ、一つ思い出したエピソードがあって。導入直後に、「すごいのが入りましたよ」とスマホを持ってPA PEOPLEを役員に説明しに行ったときのことです。
セットアップをして試しに電話をかけてみたところ、電話着信時に、着信表示(PA PEOPLEに登録している相手の名前が表示される機能)がうまく動作しませんでした。私はすかさず「PA Sync」(iPhoneで着信表示するために連絡先情報を同期する機能)すれば表示されますよ、と同期を開始したんですが、なかなか終わらなくて……。その間、どうやって話を持たせようかと苦心しました(笑)。でもそれをきっかけにPHONE APPLIに相談すると、すばやく同期が終わるように改修してくれたんです。こうしたスピード感のある対応も、社内利用が円滑に進んでいった一因かなと思います。
──提供開始から間もなかったサービスを、一緒に育てていただいた面が大きいのだなとあらためて感じています。誠にありがとうございました。
藤冨氏 働き方の変化について、私が印象的だったのは、導入初期、役員がスマホを持って社内を歩きながら「あなたは◯◯部の◯◯さんだよね?」と話しかけていた光景です。PA PEOPLEに登録された顔写真を見ながら、社員の顔と名前を一致させようとしていたんです。業務でスマホを利用するということ自体が新しい試みだったなかで、役員のスマホ利用をいちばん促進してくれたキラーコンテンツが、アドレス帳(PA PEOPLE)でした。
実際に、役員からも「新しいアドレス帳を導入してくれたおかげで、JERAは変わったよ」とコメントをもらい、JERAの新しい文化が生まれたという実感が持てたのを覚えています。PA PEOPLEによりスマホ活用やクラウドサービスの利用のハードルが下がったことで、その後の組織全体のデジタル活用が進んでいきました。
──組織文化への影響を感じていただけたこと、光栄です。その他に、現場において役立っている点はありますでしょうか。
杉村氏 必要なときにいつでもつながることができる一方で、迷惑電話など、“つながりたくない相手”の制御の面でも役立っています。私が着任した数年前には、迷惑電話対策に関する社内からの問い合わせが多数あり、個別対応をとっていました。迷惑電話に関する社内アンケートを実施したところ、基本的に共通の番号からの着信が問題であることがわかりました。
そこで、迷惑電話だと判明した番号をPA PEOPLEに個別に登録し、着信時に迷惑電話であると表示されるようにしました。それ以来、社内からの同様の問い合わせが激減しました。社員が対応不要な電話に出なくて済むようになったことで、業務時間の確保につながっているほか、詐欺等による被害のリスクも低減できていると考えています。
今後の展望:分散した情報を統合し、“次のつながり”を生む基盤へ
——PA PEOPLEのさらなる活用について、どのようにお考えですか?
杉村氏 まず取り組みたいのは、社内に分散している職責や役割情報を確認しやすくすることです。例えば、保健師や災害対策要員、デジタル推進担当者など、Entra IDでは管理できない情報を、PA PEOPLEに統合する予定です。複数のExcel台帳で管理するのではなく、一元化して、必要なときに誰でも調べられる環境を整えていきたいです。
藤冨氏 当社ではグループ外の関係会社のメンバーと密に協力してプロジェクトを遂行することが多いので、将来は関係会社のメンバーともまるで同じ会社で働いているかのように、職責や役割を参照してコミュニケーションをとりあえる環境の実現を望んでいます。
もう一つ、社員だけでなくAIエージェントの活躍におけるアイデアもあります。例えば、休職期間中の社員の代わりに社内からの問い合わせ対応を実行できるエージェントがあれば、他の社員がそこで仕事が進められるだけでなく、本人も復帰時にどんな問い合わせがきたのかを把握することができ、双方にとってメリットがあるのではないかと。
──なるほど、いずれも先進的で、壮大な取り組みとなりそうです。セキュリティの課題とも向き合いながら、どのような仕様がよいのか、ぜひ共に検討していただければ幸いです。