どこでもオフィスの新コミュニケーション基盤に

味の素株式会社

効果
  • 1つのツールで電話帳と名刺管理の2つの機能
  • iPhoneでの使い勝手、人事システムとの連携も決め手
  • 居場所把握、チャット連携も視野に

“電話帳と名刺管理を1つのツールで”が採用の決め手に

働きがいと生産性の向上を目指して働き方改革を進める味の素株式会社は、2017年にテレワーク制度の大幅なルール緩和を行うなど、全社員が場所と時間にとらわれず業務が行えるようにする「どこでもオフィス」を推進してきた。モバイルPCとスマートフォンを活用して柔軟に働ける環境の整備を進めており、2018年度にはそれをさらに推し進めるため、ペーパーレス化と本社オフィスのフリーアドレス化にも取り組んだ。


働き方改革プロジェクトにおいてICT関連施策を手がける情報企画部 IT基盤グループ マネージャーの大杉穣氏は、その進捗について次のように話す。「本社地区(東京都中央区)については、ペーパーレス化とフリーアドレス化はほぼ完了した。本社の約1,000人、営業職の500人にはスマートフォンもほぼ行き渡り、どこでも働ける環境が整っている。今後、工場や研究所も含めて全社員へと広げていく」

こうした取り組みを進めるに当たって、味の素株式会社では、社員間および社外とのコミュニケーションについてある課題が持ち上がった。

1つが、社員の連絡先を管理する電話帳システムを、新しいワークスタイルに対応させることだ。固定席で働き、PBXシステムによる内線電話で連絡を取り合うことを前提としていた既存の電話帳システムは、在宅勤務やフリーアドレス環境には適さない。すでに固定電話の台数は10分の1以下に減っており、現在、社員は会社支給のiPhoneで外線電話をかけて連絡を取り合っている。そのため、スマートフォンで利用できるように電話帳システムを改善する必要があった。

もう1つは、名刺情報のペーパーレス化と共用化だ。顧客・取引先の連絡先を名刺そのもので管理していては、場所を固定しないフリーアドレスオフィスやテレワーク環境で働く際の足かせになりかねない。また、組織・グループでその情報を共用することも難しい。

そこで、2018年のはじめに、電話帳システムの刷新と名刺管理ツールの導入を目指して様々なクラウドサービスの検討を始めた。比較検討した後、20186月にPhone Appliの「連絡とれるくん」の採用を決定。導入検討の経緯と採用の決め手について、同グループの田中達也氏はこう語る。「他にも検討したが、電話帳か名刺管理かどちらかの機能を持つツールがほとんどで、連絡とれるくんのように両方を兼ねているものは少ない。ツールの数が増えると社員が使いこなすのが難しくなるので、できるだけ集約したほうがいい。連絡とれるくんなら両方できる、というのは採用の大きな決め手になった」

また、電話帳としての機能についても、スマートフォン対応や社内システム連携といった点で連絡とれるくんを高く評価した。「当社はIP電話システムを縮小しながら、全社員をiPhoneに寄せていこうとしている。そのiPhoneでの使いやすさと、人事システムと連携できるため従業員の負荷も軽減できるという点で連絡とれるくんは一番よいツールになり得ると評価した」と田中氏は話す。

なお、味の素株式会社では2019年度内をめどに、本社地区以外の全社員にもiPhoneを配布することを決定している。固定電話も最低限必要な台数を除いて撤廃する方向だという。

社内外コミュニケーションの“ハブ”に育てたい

 味の素株式会社では、社内の働き方改革プロジェクトの進捗や現場ニーズに合わせて、連絡とれるくんの機能を段階的に展開しようとしている。第1弾として、201810月から名刺管理機能の稼働を開始。既存システムからの移行を伴う電話帳機能とは異なり、「新規ツールだから導入しやすかった」(大杉氏)のがその理由だ。

利用開始に当たっては、ログイン方法や名刺情報の登録方法などから丁寧に説明したマニュアルを作成。「個人的にも、とても直感的に使えるツール。ただし、OCRによる文字の読み取りが誤っていた場合の修正に手間がかかるという声はある。ここは改善したい」と田中氏はいう。

なお、文字の読み取り精度については、20192月に行った連絡とれるくんのバージョンアップにより改良が行われている。読み取ったデータをPhone Appliが持つ企業データベースと紐づけて、正確な企業・拠点名を登録する機能だ。使い勝手がより改善することが期待される。

一方、電話帳機能は、2019年度内を目処にリリースする予定だ。長年にわたり利用されてきた既存の電話帳システムは、現場のニーズを反映しながら更新されてきたこともあり、「登録・閲覧できる情報の細かさなど、かゆいところに手が届くものになっている。これを一気に変えると現場が混乱する。変更によって生じる問題のケアも含めて準備していきたい」と大杉氏は話す。

そこで意味を持ってくるのが、連絡とれるくんが備える他の様々な機能だ。社員の位置情報を把握するオプション機能「居場所わかるくん」や、ビジネスチャットとの連携機能などである。“単なる電話帳”に留まらない付加価値を生み出すこうしたツールも合わせて利用することで、「将来的に、味の素株式会社におけるコミュニケーションのハブとして機能させたい」考えだ。

どんなツールであろうと、既存システムからの移行には課題や負荷が生じるもの。それを補って余りある価値を生み出してこそ、新ツールは現場に受け入れられ、効果を発揮する。田中氏は、「現在検討中のチャットツールの導入や、居場所わかるくんのリリースのタイミングと合わせて電話帳機能の利用も始めることで、連絡とれるくんを、当社の『コミュニケーションのフロント』にする。そんな展開を考えている」という。

情報企画部 IT基盤グループ マネージャーの大杉穣氏(左)と田中達也氏