タレントマネジメントの定義や目的、導入ステップをわかりやすく解説

- タレントマネジメントとはどのようなものなのか知りたい
- タレントマネジメントの目的が知りたい
- 導入する方法を知りたい
タレントマネジメントとは従業員が持つ能力やスキルを把握し、最大限に活かすための人事マネジメントのことです。タレントマネジメントによって組織横断的な人事配置や戦略的な育成を可能にするため、企業の成長につながります。
昨今、人的資本経営が重要視される中で、タレントマネジメントも注目を集めています。しかし、まだどういうものなのか詳しくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、タレントマネジメントについて、次のポイントを中心にわかりやすくお伝えします。
本記事が、タレントマネジメントを導入する際の一助となれば幸いです。人的資本経営について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
タレントマネジメントの定義や目的
タレントマネジメントは、従業員一人ひとりが持つスキルや能力を最大限に活かす人材マネジメントのことを指します。最大の目的は、企業理念・戦略の実現に寄与する人材の確保と育成です。
ここでは、タレントマネジメントの基本ともいえる定義と目的についてお伝えします。
タレントマネジメントの定義
タレントマネジメントのタレントは従業員のことを意味します。そしてタレントマネジメントとは、タレントが持つ能力やスキルを管理し、人材マネジメントを行うことです。
タレントマネジメントは採用や配置、育成、評価など人事のあらゆる領域を含むため人事戦略そのものであり。経営戦略を実現するために必要不可欠といえます。
そもそもタレントマネジメントが導入されるようになったのは、1990年代に欧米でその概念が生まれたことによります。米国の大手コンサルティング会社のマッキンゼー&カンパニー社が「War for talent(人材育成競争)」というキーワードを発信したことが広まる発端となりました。
日本では、2010年前後に企業へ本格的に普及し始め、企業競争力を高める手段として注目されています。
また、タレントマネジメントは正社員だけでなく、契約社員やパート・アルバイトなど、組織における全従業員が対象です。そのため、たとえば育児や介護で正社員で働くことが困難になった優秀な人材などの多様な働き方にも対応できます。
タレントマネジメントの目的
タレントマネジメントの目的は主に5つ挙げられます。
- 優秀な人材の採用や育成
- 適材適所の人材配置
- 人材不足の解消
- 従業員のモチベーション向上
- 企業の生産性向上
目的の中でも重要なのは、優秀な人材の採用や育成です。企業にとって優れた人材は企業の成長を促し、事業戦略を実現する必要不可欠な人材になります。戦略的に人材計画を立てることで、将来必要になる可能性が高い人材も明確になり、採用や育成によって人材不足を予防できるのです。
またタレントマネジメントでは、従業員一人ひとりの能力やキャリア思考などの情報を管理します。そのため企業は従業員の適性を見極め、最適なポジションに配置することが可能です。従業員側にとっては能力が発揮できる機会になり、やりがいを感じモチベーションの向上へとつながります。
このように人材がそれぞれ活躍することで、組織全体の効率向上も期待できるのです。
タレントマネジメントが重要視された背景
昨今、タレントマネジメントが日本でも重要視されているのはなぜでしょうか。ここでは、重要視された背景についてご紹介します。
労働人口減少による人手不足
重要視された背景の一つに、日本における少子高齢化による労働人口減少、それに伴う慢性的な人手不足があります。東京商工リサーチの調査によると、2023年に人手不足を理由に事業を継続できなくなった企業は158社にも及びます。
企業間での人材獲得の競争が激化する中で、今いる自社の従業員のパフォーマンスを最大限活用することが必要不可欠となります。その解決策として注目されているのが、タレントマネジメントです。
仕事に対する価値観の多様化
もう一つは、仕事に対する価値観の多様化です。国全体が働き改革を推進していることもあり、時間や場所にとらわれない新しい働き方導入企業が増加。また、現在は安定や給与より、やりがいやワークライフバランスが重要視されるなど、仕事や働き方に対する考え方が変化しています。
そのため、従来の均一的な人材マネジメントではなく、多様な人材の一人ひとりに合わせたタレントマネジメントが重要とされているのです。
IT環境の発展や市場のグローバル化
IT環境の発展や市場のグローバル化も、タレントマネジメントが重要視される背景です。企業は、テクノロジーの進化による急速な変化に対応しなくてはなりません。また、グローバル市場が加速する中で競争するためには、多様なバックグラウンドを持つ人材の活用が不可欠です。
タレントマネジメントを通じて、最新の技術や市場動向に対応できる人材をスピーディーに確保・育成し、企業の成長を支えることが求められます。さらに、AIなどの技術革新が進んだことで、タレントマネジメントを行える環境が整備されてきたことも後押しとなっています。
タレントマネジメントがもたらす5つのメリット
タレントマネジメントがもたらすメリットには、主に次の5つが考えられます。
- 優秀な人材の採用や育成
- 適材適所の人材配置
- 人材不足の解消
- 従業員のモチベーション(エンゲージメント)向上
- 企業の生産性向上
タレントマネジメントの目的となっている項目がメリットにも直結します。なぜなら、企業のありたい姿を叶えることが企業価値の向上につながるからです。
人材を可視化することにより、企業に必要である優秀な人材を採用したり、社内にいる次世代のリーダー層に効率的に育成できることがメリットです。
また、従業員ごとに適したポジションを提示でき、自身の能力を発揮できる環境を作れます。それにより一人ひとりの能力が最大限発揮され、チーム全体のパフォーマンスも向上できます。総合的に、企業の生産性を高めることにつながるのです。
企業から評価されれば従業員のエンゲージメントが向上し、会社への帰属意識が高まることで、離職率の低下が期待できるのもメリットの一つです。
タレントマネジメントの導入ステップ
ここでは、実際にタレントマネジメントを導入するためのステップを5つに分けてお伝えします。
1. 目的や効果を明確にする
タレントマネジメント導入では、最初に目的や効果を明確にすることが何よりも重要です。なぜならば、企業がありたい姿を目指すために経営戦略があり、それを叶えるために人事戦略を立てるからです。何を達成したいのか、何を解決したいのか、具体的な目標を設定しましょう。
たとえば、生産性の向上や業績アップなど、自社の戦略に合わせて目的を設定することが大切です。
明確な目的があれば、取り組みの成功を判断しやすくなります。
2. タレント情報を整理して現状を把握する
社内の人材情報を整理し、現状を把握することも目的の一つです。これにより、現在の人材配置やスキルギャップを明確にできます。従業員のスキルや経験だけでなく、キャリア思考まで収集する項目を設定し可視化しましょう。
現状が明確になれば、これからの適切な人材育成計画や配置戦略を立てるための情報として活用できます。
3. 新たな人材を採用・育成する
社内の人材を把握したら、社外から新たな人材を採用・育成することを検討しましょう。今いる人材だけで対応できるのが理想かもしれませんが、人事戦略上で必要な人材とのギャップがある場合は採用で補う必要があります。
企業のニーズに合った人材を見つけ、効果的な育成プログラムを提供しましょう。育成には、実際に業務をしながら能力を身につけるOJT(On-the-Job Training)とeラーニングなどの研修で知識を得るOff-JT(Off-Job Training)を掛け合わせるのがオススメです。
4. タレントを適材適所に配置する
整理した人事情報と育成計画をもとに、タレントを適材適所に配置します。実際に人材が活躍できるかは、マネジメントする管理者の役割が大きいです。マネジメントする管理者は、事前の情報を把握し、現在の働きぶりを把握しておきましょう。
人材が能力を発揮できているか、能力向上できているか、モチベーションはどうかなどをチェックする必要があります。
また、適材適所の配置には会社都合の一方的な決定ではなく、従業員自身のキャリアプランも踏まえることが、モチベーションの維持・向上につながります。
5. 計画と結果を比較して検証・評価する
実行した後は、計画と結果を比較して、検証・評価することが大切です。企業競争力を高めるためには、スピーディーな適材適所の人員配置が必要となります。そのためにも、配属部門と人事部門の連携が重要だからです。
比較した結果、計画とのギャップがある場合には、育成計画や教育体制の見直しを行いましょう。たとえば、当初予定していた研修だけでは不十分であればOJTを延長するなどして、従業員の能力開発を促します。
また、パフォーマンス評価を本人へフィードバックすることも重要です。そのときの本人の反応や考えを配属先の責任者から人事に伝え、人事情報を最新に保ちましょう。
【ツール紹介】人的資本経営で必要な人材スキルの可視化に役立つ「PHONE APPLI PEOPLE」の特長や機能とは
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引用:"ライフネット生命":https://www.lifenet-seimei.co.jp/
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同社は、社員規模の拡大によるマネジメントの必要性や世の中の働き方の多様性に対応するため、「パラレルイノベーター採用」を導入しています。
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実際、複業での学びを本業へと活かす動きも生まれ始めています。一つの例としては、パラレルキャリアとして人事コンサルティング業を営む人事担当者が、複業でのクライアントが導入している健康施策のツールを同社にも導入。そのツールの導入により、組織の健康状態を見られる体制が整えられました。
この新たな採用は多様なスキルや経験を持つ人材を集め、会社全体の生産性向上へとつながっています。
【まとめ】タレントマネジメントについてわかりやすく解説すると
本記事では、タレントマネジメントについて、以下のポイントを中心にお伝えしました。
- タレントマネジメントは、従業員(タレント)一人ひとりが持つスキルや能力を最大限に活かす人材戦略のこと
- 導入する目的はさまざまだが、最大の目的は企業理念・戦略の実現に貢献する人材の確保と育成
- 導入するステップは目的の明確化から始まり、現状の人材情報整理と把握、新規採用と育成、適材適所の配置、検証・評価の5段階
継続的に成長できる企業となるには、従来の人材マネジメントから脱却し、人材をどう活かすかというタレントマネジメントの活用が鍵になります。経営戦略と人事戦略を連携させ、タレントマネジメントの導入を成功させましょう。
本記事が、タレントマネジメントを導入するための参考として役立てていただけたら幸いです。