【2026年最新】人的資本開示とは?開示事項と企業価値につなげる実践4ステップ
人的資本開示とは、従業員のスキルや育成、エンゲージメントなど人材に関する情報を、投資家などのステークホルダーへ公表することです。
2023年3月期から有価証券報告書での開示が制度化され、2026年3月期からは連結ベースの人材戦略や従業員給与等の決定方針などの項目が加わりました。
対象となるのは有価証券報告書の提出会社であり、上場・非上場を問いません。ただし、人的資本開示は制度対応だけでなく、人材への投資と企業価値のつながりを示す機会でもあります。指標を並べるだけでは、そのつながりは伝わりにくいでしょう。
本記事では、人的資本開示の概要や2026年の制度改正による変更点、開示事項を解説します。また、2022年版の「人的資本可視化指針」で示された7分野19項目を参考情報として紹介し、企業価値向上につなげる進め方も解説します。
人的資本開示とは
人的資本開示とは、企業が保有する人材の知識・スキル・経験などの人的資本に関する情報を、投資家などのステークホルダーに向けて公表することです。
たとえば、以下の内容が含まれます。
- 従業員数
- 人材への投資額
- 保有スキル
- エンゲージメント
- 離職率
- 女性管理職比率
人的資本開示では、従業員数や人材への投資額などの定量的な情報に加え、人材育成方針や社内環境整備方針など、人材戦略に関する情報も重要です。
財務諸表だけでは、「どのような人材を抱えているのか」「人材にどう投資しているのか」は見えにくいものです。これらを開示することで、企業の成長性や経営戦略の実現可能性をステークホルダーに伝えやすくなります。
日本でも制度整備が進み、有価証券報告書の提出義務がある企業には、人材戦略や従業員に関する所定の情報の開示が求められています。こうした企業では、自主的な情報発信に加え、法令や開示制度に基づく対応も必要です。
人的資本と人的資源の違い
人的資本 |
人的資源 |
|
人材の捉え方 |
知識・スキル・経験などを、企業価値を生み出す資本として捉える |
人材を、企業活動を支える経営資源として捉える |
人材への費用 |
将来の価値創出につながる投資として捉える |
事業運営に必要なコストとして捉えられる場合がある |
教育・研修 |
生産性向上やイノベーションにつながる投資と位置づける |
事業運営に必要な費用のひとつと位置づけられることが多い |
重視すること |
人材への投資と、その結果として生まれる企業価値 |
人材を効率的に活用し、事業を安定的に運営すること |
基本的な考え方 |
人材への投資によって企業価値を高める |
人材を経営資源として有効活用する |
人的資本と人的資源の主な違いは、人材の捉え方や人材にかける費用です。
人的資本は、人材の持つ知識・スキル・経験・能力を、企業価値を生み出す資本とみなす考え方です。教育や研修、キャリア形成にかかる費用は支出ではなく、将来の生産性向上やイノベーションにつながる投資として扱われます。
一方、人的資源は、人材を企業活動に活用する資源として捉える考え方です。採用や育成、労務管理にかかる費用は、事業運営に必要なコストとみなされる傾向がありました。そのため、コストを抑えて人材を有効活用することが重視されてきました。
同じ研修費用でも、人的資源の視点ではコストとして捉えられる場合があり、人的資本の視点では価値創出につながる投資として捉えます。人的資本開示は、後者の考え方に立ち、人材への投資とその成果を示す取り組みといえるでしょう。
人的資本開示が求められる理由
人的資本開示が求められる主な理由・背景は、次の4つです。
- ESG投資への関心が高まっている
- 企業価値に占める無形資産の割合が高まっている
- 欧米を中心に人的資本開示が進んでいる
- 人材戦略と経営戦略のつながりを示す必要がある
これらの背景を押さえておくことは、人的資本開示の目的を理解するうえで役立ちます。
ESG投資への関心が高まっている
近年、投資家は売上高や利益などの財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンスへの取り組みを示す非財務情報にも注目しています。
ESGは次の頭文字を取った言葉です。
- Environment(環境)
- Social(社会)
- Governance(ガバナンス)
人的資本は、主に「Social(社会)」に関係します。
財務情報だけでなく、ESGに関する非財務情報も判断材料となります。人権や労働環境、ダイバーシティなどに適切に対応しながら、長期的に企業価値を高められるかどうかが問われます。そのため、従業員のスキルや人材育成、エンゲージメント、多様性に関する情報は、投資家が企業の将来性や持続可能性を判断する材料となります。
人的資本は、企業の競争力や持続的な成長を支えるうえで重要な要素です。人材への投資方針とその成果を開示すれば、成長に向けた取り組みを投資家やその他のステークホルダーに伝えやすくなるでしょう。
企業価値に占める無形資産の割合が高まっている
企業価値の源泉として、工場や設備などの有形資産以外にも、無形資産の重要性が高まっています。無形資産には、人材の知識・スキル・経験だけでなく、技術やブランド、組織力などが含まれます。人的資本は、事業活動やイノベーションを支える中核的な経営資源です。
必要な人材を確保・育成し、その能力を発揮できる環境を整えられるかどうかは、企業の競争力を大きく左右します。人的資本への投資は、生産性の向上や新サービスの創出、環境変化への対応力強化にもつながります。
しかし、このような人材の状況や人材戦略は、財務諸表からは読み取りにくいでしょう。そこで、人材への投資と経営戦略・企業価値とのつながりを開示し、企業の将来性を伝えることが重要です。
欧米を中心に人的資本開示が進んでいる
欧米では、日本に先行して人的資本情報の開示制度が整備されてきました。2018年には人的資本情報の測定・開示に関する国際規格「ISO 30414」が公表され、2025年には改訂版が発行されています。日本の人的資本開示も、国際的な動向を受けて進展してきた経緯があります。
日本では、2023年3月期から有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄が新設されました。人的資本は、人材育成方針や社内環境整備方針、関連する指標・目標・実績が開示対象です。また、一定条件に該当する企業には、女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女間賃金差異等の記載も求められています。
さらに、2026年2月の改正では、連結ベースの人材戦略や給与関連情報などが追加されました。金融庁は、2026年度の有価証券報告書レビューで人的資本に関する開示を重点テーマに挙げています。このように、開示の質が問われる段階に入ったと考えてよいでしょう。
人材戦略と経営戦略のつながりを示す必要がある
経営戦略を実行するには、必要な人材の確保・育成と、能力を発揮できる環境の整備が欠かせません。そのため、人的資本開示では、従業員数や研修時間などの数値を並べるだけでは不十分です。経営戦略の実現に向けて、どのような人材が必要なのかを明確にする必要があります。
そのうえで、人材施策と、その進捗を測る指標・目標を関連付けて示します。たとえば、DXを推進する企業であれば、必要なデジタル人材の人数やスキルを具体化することから始めるとよいでしょう。採用・育成施策、研修の実施状況、事業への貢献をひとつの流れで示せば、経営戦略との関係が伝わりやすくなります。
金融庁も、人的資本に関する取り組みを戦略・施策・指標・目標と関連付けて開示することを重視しています。同庁の「記述情報の開示の好事例集」では、企業の開示事例が紹介されているため、自社の開示を検討する際の参考にしてください。
出典:金融庁「記述情報の開示の好事例集2025」(2026年)
【2026年最新】人的資本開示の変更点
2026年2月20日、金融庁は「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正を公布・施行しました。人的資本に関する新たな開示事項は、2026年3月31日以後に終了する事業年度、つまり2026年3月期の有価証券報告書から適用されています。
有価証券報告書の制度改正で新たに求められる開示事項は、次の3つです。
新たな開示事項 |
内容 |
連結ベースの企業戦略と関連付けた人材戦略 |
経営方針・経営戦略等と関連付けた人材戦略を、連結ベースで記載する |
人材戦略を踏まえた従業員給与等の決定方針 |
上記の人材戦略を踏まえ、従業員の給与等の額および内容の決定に関する方針を記載する |
提出会社の従業員の平均給与の対前年比増減率 |
従来の平均年間給与に加え、対前事業年度の増減率を記載する |
これらの項目は、サステナビリティ情報の記載欄とは別に、「従業員の状況等」の欄に記載します。人材戦略、給与方針、給与の実績をひとつの流れで示す構成になっています。
なお、制度改正とは別に、2026年3月には内閣官房・金融庁・経済産業省が「人的資本可視化指針」を改訂しました。指針は法的拘束力を持たない実務ガイダンスですが、開示府令の新たな要件に対応する考え方が整理されています。法令上の義務と任意の指針は性質が異なるため、区別して確認しましょう。
※出典:金融庁「『企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令』等の公布及びパブリックコメントの結果について」(金融庁)(2026年9月13日に利用)
※出典:内閣官房「人的資本可視化指針(改訂版)」(2026年)
人的資本開示が義務化される対象企業
人的資本の法定開示の対象となるのは、有価証券報告書の提出会社です。上場企業だけでなく、有価証券報告書の提出義務がある非上場企業も含まれます。人的資本開示の対象かどうかは、上場・非上場ではなく、有価証券報告書の提出義務の有無で判断する点に注意しましょう。
有価証券報告書の提出義務がない企業に対し、人的資本情報の法定開示は一律には求められていません。ただし、法定開示の対象外でも、人的資本情報を自主的に開示することは可能です。
有価証券報告書への開示義務項目
2023年の制度改正で、有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設されました。人的資本に関する情報は、主に「戦略」と「指標及び目標」の項目で開示します。主な開示項目と記載内容は、以下のとおりです。
有価証券報告書の項目 |
主な開示内容 |
開示のポイント |
サステナビリティに関する考え方及び取組「戦略」 |
人材育成方針、社内環境整備方針 |
人材育成や働きやすい環境づくりに関する方針を記載 |
サステナビリティに関する考え方及び取組「指標及び目標」 |
方針に関する指標、目標、実績 |
設定した指標や目標だけでなく、実績も開示 |
従業員の状況 |
女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女間賃金差異など |
関連法令に基づく公表義務の対象となる場合に記載 |
人材戦略などの追加項目 |
連結ベースの人材戦略、給与等の決定方針、平均給与の対前年比増減率など |
2026年3月期から追加された項目への対応が必要 |
なお、多様性に関する3指標である女性管理職比率・男性育児休業取得率・男女間賃金差異は、すべての有価証券報告書提出会社に一律の記載義務があるわけではありません。
女性活躍推進法などの関連法令に基づく公表義務の対象となっているかを確認したうえで、開示の要否を判断しましょう。
さらに、2026年3月期からは、連結ベースの人材戦略、給与等の決定方針、平均給与の対前年比増減率なども追加されました。開示項目が増えた分、社内での情報収集と整理の負担が大きくなる可能性があります。開示内容を検討する際は、現行の法令に基づく開示要件を確認しましょう。また、開示する情報を整理する際の参考資料として、2022年版の「人的資本可視化指針」で示された7分野19項目も活用できます。
人的資本開示の参考となる7分野19項目
2022年に内閣官房などから公表された「人的資本可視化指針」では、人的資本に関する開示事項の例として、7分野19項目が整理されています。
7分野19項目は、企業が開示内容を検討する際の参考情報であり、すべての項目について開示を義務付けるものではありません。
また、2026年3月に公表された改訂版では、7分野19項目の分類は明示されていません。
2026年改訂版では、経営戦略と人材戦略の連動や、人的資本投資と企業価値向上のつながりが重視されています。実際の開示内容は、現行の法令や指針を確認したうえで、自社の経営戦略に応じて検討してください。
ここでは、人的資本に関する情報を整理する際の参考として、2022年版で示された7分野19項目を紹介します。
分野 |
19項目 |
人材育成 |
リーダーシップ、育成、スキル・経験 |
エンゲージメント |
エンゲージメント |
流動性 |
採用、維持、サクセッション |
ダイバーシティ |
ダイバーシティ、非差別、育児休業 |
健康・安全 |
精神的健康、身体的健康、安全 |
労働慣行 |
労働慣行、児童労働・強制労働、賃金の公平性、福利厚生、組合との関係 |
コンプライアンス・倫理 |
コンプライアンス・倫理 |
人材育成
人材育成の分野には、「リーダーシップ」「育成」「スキル・経験」の3項目があります。それぞれの内容と主な開示例は、下表のとおりです。
開示する内容 |
主な開示例 |
|
リーダーシップ |
次世代リーダーの選抜・育成方針、能力の評価体制 |
リーダー候補者数、選抜プログラムの内容、評価制度 |
育成 |
人材への投資状況 |
研修時間・費用・参加率、キャリア開発制度 |
スキル・経験 |
経営戦略に必要なスキルの保有・習得状況 |
重点スキルの保有者数、リスキリングの実施状況 |
スキル・経験を定量的に示すには、社内のスキル情報を把握できる仕組みが必要です。どのようなスキルを持つ人材がどれだけいるのかを把握できていなければ、数値として示せません。現状把握の仕組みを整えることは、開示内容の具体性を高めるうえで重要です。
エンゲージメント
エンゲージメントは、従業員が仕事や企業に対して持つ意欲・愛着に関する項目です。主な開示例には、エンゲージメントサーベイや従業員満足度調査の結果があります。ただし、スコアだけを示しても、投資家にはその意味が伝わりにくいでしょう。
スコアと併せて開示したい情報を、下表に整理しました。
併記する情報 |
開示する意味 |
調査対象・回答率 |
スコアの信頼性や網羅性を示す |
過去からの推移 |
改善傾向にあるか、悪化しているかを示す |
スコアを踏まえた改善施策 |
従業員の声を職場改善にどう活用しているかを示す |
施策の効果検証 |
改善サイクルの進捗を示す |
従業員の声を職場改善にどのように活かしているかまで示せば、開示内容に説得力が生まれます。
従業員の経歴やスキルを可視化し、社内の人材を検索・活用できる「PHONE APPLI PEOPLE」の資料は、以下からダウンロードできます。
従業員の潜在的なスキルを
AIで可視化
流動性
流動性の分野には、採用・維持・サクセッションの3項目があります。人材の「入口」「定着」「次世代への引き継ぎ」に対応する項目と捉えるとわかりやすいでしょう。各項目の内容は、下表のとおりです。
開示する内容 |
主な開示例 |
|
採用 |
必要な人材の確保状況 |
採用人数・コスト・充足期間、専門人材の確保に向けた取り組み |
維持 |
人材の定着状況と定着施策 |
離職率・定着率、キャリア支援、働き方、処遇の改善 |
サクセッション |
経営幹部・重要ポジションの後継者準備 |
後継者候補の人数、育成・準備状況 |
サクセッションは、経営の継続性に関わる項目です。人材の出入りと次世代の準備状況を一体で示すことで、組織の持続性を伝えられます。
ダイバーシティ
ダイバーシティの分野には、ダイバーシティ・非差別・育児休業の3項目があります。各項目で示す内容と主な開示例は、下表のとおりです。
開示する内容 |
主な開示例 |
|
ダイバーシティ |
人材構成の多様性 |
女性管理職比率、外国籍従業員割合、年齢構成 |
非差別 |
処遇差の実態と是正の取り組み |
性別・雇用形態による処遇差、格差是正に向けた施策 |
育児休業 |
育児休業の取得・復職状況 |
男女別の取得率・取得者数、復職率、復職後の定着率 |
女性管理職比率や男性育児休業取得率は、有価証券報告書の法定開示にも重なる項目です。
健康・安全
健康・安全の分野には、精神的健康・身体的健康・安全の3項目があります。従業員が心身ともに健康に働ける環境であることは、生産性の維持・向上にも関係します。各項目の内容を、下表に整理しました。
開示する内容 |
主な開示例 |
|
精神的健康 |
メンタルヘルス対策 |
ストレスチェックの実施状況、研修、相談窓口の設置 |
身体的健康 |
健康増進・健康経営の取り組み |
健康診断の受診率、健康施策の実施状況 |
安全 |
労働災害の防止体制 |
労働災害の発生件数・割合、安全衛生研修、マネジメントシステムの導入状況 |
これらの情報を開示することで、健康・安全に関する方針や取り組みを説明できます。数値の改善だけでなく、予防の仕組みがあることを伝える視点も重要です。
労働慣行
労働慣行の分野には、労働慣行、児童労働・強制労働、賃金の公平性、福利厚生、組合との関係の5項目があります。7分野のなかでも項目数が多く、幅広い領域をカバーしている分野です。
開示する内容 |
主な開示例 |
|
労働慣行 |
労働条件に関する方針 |
労働時間、休暇取得状況、働き方に関する制度 |
児童労働・強制労働 |
人権・労働者の権利の尊重 |
人権方針、サプライチェーンを含めた人権デューデリジェンス |
賃金の公平性 |
賃金に関する方針 |
賃金水準、公平な賃金決定の仕組み |
福利厚生 |
福利厚生の内容 |
福利厚生制度、利用状況 |
組合との関係 |
労使関係の状況 |
労働組合との対話の実施状況、労使協議の仕組み |
人権や労働環境の問題は、企業の信用や事業継続にも影響を及ぼしかねません。そのため、リスク管理の観点からも重要な分野です。近年は、自社だけでなくサプライチェーンを含めた人権尊重の方針を示すことも重要になっています。
コンプライアンス・倫理
コンプライアンス・倫理は、法令、社会規範、企業倫理に沿って事業を行うための仕組みに関する項目です。開示する情報は、予防・把握・対応の3つの観点で整理できます。
開示する内容 |
主な開示例 |
|
予防 |
違反を未然に防ぐ取り組み |
コンプライアンス研修の受講率、行動規範の周知状況 |
把握 |
問題を検知する仕組み |
内部通報制度の利用状況、監査の実施状況 |
対応 |
発生後の対処体制 |
法令違反・懲戒処分の件数、人権・差別事例への対応 |
件数を公表することに抵抗を感じる企業もあるかもしれません。しかし、問題を検知して対処する仕組みを示すことで、適切なリスク管理体制を説明しやすくなります。
人的資本開示を企業価値向上につなげる進め方の例
人的資本開示を企業価値向上につなげるには、開示そのものを目的にせず、経営と人材をつなぐプロセスの一部として考えることが重要です。ここでは、企業が実践する際の進め方の一例として、4つのステップを紹介します。
- 人材・組織のあるべき姿を明確にする
- 現状を把握し、課題を特定する
- 人材戦略・人的資本投資の計画を策定する
- 施策を実行し、継続的に改善する
各ステップで何をすべきか、順に解説します。
人材・組織のあるべき姿を明確にする
まず、経営戦略の実現に必要な人材を整理します。中期経営計画や事業戦略をもとに、どの事業領域でどのような人材が必要になるのかを洗い出します。そのうえで、必要な人数・スキル・能力を具体化しましょう。
また、人材が能力を発揮できる組織環境も検討します。必要な人材を確保できても、活躍できる環境がなければ成果につながりません。「どのような人材が、どのような組織で働いている状態が理想か」を言語化することが、このステップのゴールです。
現状を把握し、課題を特定する
次に、現在の人材、スキル、配置状況を把握します。人事データが部門ごとに分散している企業では、情報を横断的に確認できる状態を整えることが重要です。従業員の経歴や保有スキルが可視化されていなければ、定量的な現状把握が難しくなります。
現状を整理できたら、ステップ1で描いたあるべき姿と比較します。ここで、不足している人材や、組織上の課題が具体的に見えてくるでしょう。そのギャップを埋めるために必要な施策を整理しておくと、次の計画策定がスムーズに進みます。
人材戦略・人的資本投資の計画を策定する
現状把握と課題の特定が完了したら、課題を解決する人材施策と人的資本投資を決めます。施策ごとに、期待できる効果と、実行しない場合のリスクを整理しましょう。経営への影響を踏まえて優先順位を付けることで、予算配分を検討しやすくなります。
また、各施策の実行時期、目標、KPIを設定します。ここで重要なのは、開示のために指標を後付けするのではなく、経営上の必要性から指標が生まれる流れをつくることです。
社内施策のために設定したKPIの中には、そのまま人的資本開示の指標として活用できるものもあり、こうした一貫性は開示の説得力にもつながります。
施策を実行し、継続的に改善する
最後に、計画に基づいて人材施策と人的資本投資を実施します。その後は、設定した指標と目標を用い、進捗や効果を定期的に確認します。想定どおりに進んでいない施策があれば、原因を分析して見直しを図りましょう。
評価結果を踏まえて施策や計画を修正し、改善結果を人的資本開示や投資家との対話に反映します。改善の経過を継続的に示すことで、経営戦略と人的資本投資のつながりを説明しやすくなります。
人的資本開示で陥りやすい失敗
人的資本開示では、開示項目を埋めること自体が目的化しないよう注意が必要です。制度対応に追われるあまり、数値を揃えることに終始すると、経営戦略とのつながりが抜け落ちてしまいます。これでは、投資家に自社の強みや将来性が伝わりにくくなるでしょう。
また、他社のKPIをそのまま模倣するのも、避けたい失敗です。業界で一般的な指標を並べても、自社の戦略との関係が弱ければ説得力を欠くでしょう。また、データを収集しても現場の行動につながらない場合もあります。サーベイの結果が経営層への報告で止まり、管理職や従業員の行動が変わらないままになる状態です。
このような失敗を防ぐには、データから見えた課題に対し、責任者や具体的な改善行動まで整理することが重要です。開示のための数値ではなく、現場の改善に使える数値として運用する視点で見るとよいでしょう。
「組織サーベイを実施しているのに、人的資本経営につながらない」とお悩みの方には、以下の資料がおすすめです。人的資本経営につながらない原因と解決策を解説します。
多くの企業が直面する
サーベイ活用の壁を解決します
人的資本経営に必要なデータ活用を支援するPHONE APPLIのサービス
人的資本の指標は、一度測定して終わりではなく、継続的に測定する必要があります。そのため、次の2つの情報を日常的に把握できる仕組みが大切です。
- 人材情報:従業員一人ひとりのスキルや経歴など
- 組織情報:組織全体の状態
ここまで解説してきた「現状把握の難しさ」や「データが現場の行動につながらない」という課題は、人的資本経営に取り組む際に直面しやすいものです。PHONE APPLIでは、これらの実務課題に対応する2つのサービスを提供しています。それぞれの特徴を紹介しましょう。
PHONE APPLI PEOPLEで人材・スキルを可視化する
コミュニケーションポータル「PHONE APPLI PEOPLE」は、従業員の経歴や保有スキルを可視化できるサービスです。従業員のプロフィールにスキルや経験、担当業務などの情報をまとめ、社内の人材情報を一元管理できます。
業務内容やスキルから社内人材を検索できるため、「このスキルを持つ人材は社内にどれだけいるのか」をすぐに把握することが可能です。人的資本開示でスキル・経験に関する情報を示す際の現状把握にも役立ちます。
可視化した情報は、適材適所の人材配置や育成計画の立案、部門を越えた社内連携にも活用できます。
ManejaSで組織状態を現場の改善につなげる
ピープルマネジメントシステム「ManejaS(マネジャス)」は、組織や従業員の状態を可視化し、現場の改善を支援するサービスです。主な機能として、次の4つを備えています。
- 性格傾向診断
- エンゲージメントサーベイ
- マネジメントフィードバック
- ウェルビーイングカンパニーサーベイ
これらの機能を通じて、従業員一人ひとりの特性や組織全体のコンディションなどを多面的に可視化し、優先的に取り組むべき課題を特定できます。管理職がチームの状態を確認し、必要な対応を検討できるため、サーベイ結果を日々のマネジメントに活かしやすくなるでしょう。
人的資本開示で示す指標だけでなく、改善の取り組みまで継続的に把握したい企業にも活用できます。
人的資本開示を継続的な組織改善につなげよう
人的資本開示は、2026年3月期から開示項目が拡充され、連結ベースの人材戦略や給与方針なども開示対象に加わりました。法定開示の対象企業には制度への対応が求められる一方、人的資本開示では、経営戦略・施策・指標・目標のつながりを示すことも重要です。
開示した指標は、投資家向けの情報として終わらせず、継続的な組織改善にも活用することが大切です。そのためには、人材・組織の現状を正しく把握し、データを現場の行動につなげる仕組みが欠かせません。
まずは自社の人材・スキルや組織状態を可視化し、人的資本経営に向けた取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。
従業員のスキル・経歴を可視化し、人材の現状把握を仕組み化したい方は、PHONE APPLI PEOPLEの資料をご覧ください。
組織サーベイの結果を現場の改善行動につなげたい方は、ManejaSの資料をダウンロードしてご確認ください。