化学製品、繊維素材、住宅・建材、医療製品など幅広い領域の商品を扱う総合化学メーカーの旭化成株式会社。同社は2021年1月に、DX強化施策の一環としてデジタル共創ラボCoCo-CAFEをオープンした。しかし、フリーアドレスオフィスであるCoCo-CAFEをオープンするためには“誰がどこにいるのか”を把握しなければならないという課題があった。
この課題を解決すべく、同社はPHONE APPLI PLACE(旧:居場所わかるくん、以下PLACE)の導入を決定。同時に利用開始したPHONE APPLI PEOPLE(旧:連絡とれるくん、以下PEOPLE)との相乗効果もあったという同社に、ツールの導入を決めたポイントや導入後の成果を伺った。
フリーアドレスオフィスをオープンにするため、
従業員の居場所を把握できるツールが必要だった
人の居場所を見える化するサービスPLACEとクラウドWeb電話帳PEOPLEを導入している同社。導入前は、以下の4つの課題を抱えていたという。
1.CoCo-CAFEのオープンで誰がどこにいるのかわからなくなることが懸念された
2.社内イントラネットの電話帳が使いにくかった
3.社外連絡先が共有されていなかった
4.従業員同士のコミュニケーションを活性化させたかった
1つ目の課題は、CoCo-CAFEのオープンで誰がどこにいるのかわからなくなることが懸念されたことだ。
CoCo-CAFEとは、同社がDX強化施策の一つとしてオープンすることになったフリーアドレスのオフィスのこと。この新オフィスをオープンするにあたり、社内でヒアリングを実施したところ、「フリーアドレスのため誰がどこにいるのかわからなくなりそう」という意見が出た。そこでCoCo-CAFEをオープンする前に、従業員の居場所を把握できるようにすることが課題になったそうだ。
2つ目の課題は、社内イントラネットの電話帳が使いにくかったこと。
CoCo-CAFEとはまた別の話になるが、同社では既存電話帳の使いにくさも課題になっていたという。既存電話帳は人事情報と紐づいていないため、従業員が自分で電話番号や人事情報をパソコンで入力していた。そのため、更新をしていない従業員がいると、最新の情報が反映されず、古い情報が残ってしまう場合もあった。また、連絡先を検索する際は組織ツリーから辿るしかなく、連絡を取りたい相手の連絡先になかなか辿り着けなかったという。さらに、既存電話帳はスマートフォンで開けなかったため、電話の発着信時にも不便を感じていた。必要な連絡先は個々人が手動で端末の電話帳に登録していたそうだ。
3つ目の課題は、社外連絡先が共有されていなかったことだ。
社内連絡先はイントラネットの電話帳で管理していたが、社外連絡先は紙の名刺を個人で持っていた。このため、取引先の情報を一元管理し、社内で共有できるようにすることも同社の課題の一つだった。
4つ目の課題は、従業員同士のコミュニケーションを活性化させたかったこと。
CoCo-CAFEは“Communication(コミュニケーション)”と“Concentration(集中)”がテーマだ。これには仕事に集中することはもちろん、従業員同士のコミュニケーションも活性化させていきたいという同社の方針が表れている。しかし、コロナ禍で出社率は3割以下となり、新しく入ってきた人と会う機会も少なくなっていた。この状況ではせっかくCoCo-CAFEに来ても周りが知らない人ばかりだと話しかけるハードルが高く、コミュニケーションが生まれないことが懸念されたそうだ。
従業員の居場所が把握できることが決め手に
同社の研究・開発本部 技術政策室 DX事業開発部 主幹研究員 加藤智之氏は、PLACEとPEOPLEの導入を決めたポイントとして、以下の2つを挙げた。
1.リアルタイムで従業員の位置情報が分かること
2.コミュニケーションの活性化が期待できること
1つ目のポイントは、リアルタイムで従業員の位置情報が分かることだ。
「フリーアドレスのオフィスをオープンするにあたり、“誰がどこにいるのかわからない”ことが課題となっていました。PLACEであれば、PEOPLEの画面上で従業員の位置情報が把握できるので、この課題が解消できます。これが導入を決めた理由の一つです」と加藤氏は話す。
2つ目のポイントは、コミュニケーションの活性化が期待できること。
PEOPLEでは、従業員情報として氏名・所属・連絡先の他に“マイプロフィール”として挨拶文や自分の趣味について書けるスペースがある。加藤氏は「マイプロフィールをきっかけに従業員同士のコミュニケーションが生まれるのではないかと考えました」と語った。
マニュアルや説明会動画の共有による周知を通じて、利用促進を図った
PLACEとPEOPLEの導入を決定した同社。デジタル共創本部 DX企画管理部 企画総務グループの児玉真紀氏によると、社内でツールの利用を促進するために以下の2つの策を実施したそうだ。
1.マニュアルの配布と説明会の開催
2.働き方改革の担当者による周知
1つ目の利用促進策は、マニュアルの配布と説明会の開催だ。
児玉氏は、ツールの利用者を増やすための方策について、次のように話す。「まずはPHONE APPLIが作成したマニュアルを配布して使い方を知ってもらうことからスタートしました。これに加えて、PHONE APPLIのカスタマーサクセスチームを招いて説明会も開催し、その様子は動画にして社内ポータルにアップしています。この動画はたくさんの従業員に観てもらえたため、利用者の増加に貢献していると思います。」
2つ目の利用促進策は、働き方改革の担当者による周知。
続けて児玉氏は次のように話してくれた。「働き方改革の担当者がPLACEとPEOPLEをメールで周知し、利用を促してくれています。また、異動等で新しく部署に入ってきた従業員には、ツールの操作方法を教えて丁寧にサポートすることで、まずは自分の部署から日常的に使ってくれる利用者を生み出そうとしています。」
従業員の居場所見える化・電話帳の利便性向上により、
社内コミュニケーションが活発に
PLACEとPEOPLEを導入したことは、同社に以下の4つの効果をもたらした。
1.オフィスのどこに誰がいるか把握できるようになった
2.社内のコミュニケーションが活性化した
3.社内電話帳の利便性が向上した
4.部署全体で名刺を共有できるようになった
1つ目の効果は、オフィスのどこに誰がいるか把握できるようになったことだ。
PLACEを導入したことで、CoCo-CAFEの“どこに”“誰が”いるのか画面上で一目瞭然となった。さらにテレワークで自宅にいる時でもオフィスに誰がいるのかわかるため、現場のスタッフに資料の印刷や到着した荷物の処理を依頼できるようにもなったとのこと。加藤氏は出先にいるときにスマートフォンでPLACEをチェックし、「この人が来ているなら、後でCoCo-CAFEに寄ろうかな」といった使い方もしているそうだ。
2つ目の効果は、社内のコミュニケーションが活性化したこと。
PLACEではオフィス内にいる人の名前と所属が顔写真と共に表示されるため、業務連絡で話しかける時に「本当にこの人で合っているのか?」と不安になることもなくなった。また、連絡を取りたい人の顔や名前の記憶が曖昧だったとしても、PEOPLEで、業務名やフリーワードから簡単に連絡先を調べることができる。さらにPEOPLEにプロフィール情報を登録していれば、CoCo-CAFEでたまたま近くに居合わせた人の“趣味”や“好きなもの”までわかるため、会話のきっかけになり、コミュニケーションが活発になっているという。
3つ目の効果は、社内電話帳の利便性が向上したこと。
従来使っていた電話帳は組織ツリーからしか連絡先を検索できなかったが、PEOPLEでは名前や業務内容からも探せるようになった。これによって連絡先を探す時間が大幅に短縮され、業務効率化に貢献している。また、PEOPLEはスマートフォンでも開けるため、自分で端末の電話帳に登録する必要もなくなった。PEOPLEに登録されていれば、端末内の電話帳に登録がなくても、氏名や所属情報が正確に着信表示されるため便利だと社内でも好評だ。
4つ目の効果は、部署全体で名刺を共有できるようになったことだ。
名刺はもともと紙媒体で個人管理していたが、今はPEOPLEの名刺管理機能も活用している。これによって、名刺をデータ化して部署全体で共有できるようになった。複合機とも連携したので、まとめて名刺を取り込むことも可能だ。児玉氏は「名刺を共有できるようになったことで、引き継ぎが楽になったという声も聞いています」と話す。
最後に加藤氏は、同社とCoCo-CAFEの今後について次のように語る。
「CoCo-CAFEのテーマは“Communication(コミュニケーション)”と“Concentration(集中)”です。今はコロナ禍で出社率が非常に低くなっていますが、今後状況が落ち着いてくればCoCo-CAFEを利用する従業員はもっと増えてくるはず。その時に、今よりさらにカフェ内でのコミュニケーションが増える工夫をしていかなければと感じています。そのためにも、PLACEとPEOPLEはもちろん、他のツールも積極的に試していきたいです」