心理的安全性を高める5つのメリット|計測方法や高める方法について解説

「心理的安全性を高めるメリットとは?」
「心理的安全性の測り方について詳しく知りたい」
「心理的安全性が高い職場とはどのような状態か知りたい」
心理的安全性とは、組織やチーム内で自分の考えや気持ちを、誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。
この概念は、1999年にハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱したもので、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。
2015年には、Google社が「心理的安全性は成功するチームを作る上で最も重要である」と発表し、広く知られるようになりました。
そこで本記事では、心理的安全性について次のポイントを中心にお伝えします。
- 【この記事でわかること】
- 心理的安全性を高める5つのメリットについて
- 心理的安全性を計測する質問方法について
- 心理的安全性を高める5つの方法について
心理的安全性の向上の際には、ぜひ本記事の内容をお役立てください。
心理的安全性を高める5つのメリット
さっそく、心理的安全性を高めるメリットについて5つお伝えします。
1. チーム全員のパフォーマンスが向上する
心理的安全性の根底には、互いを尊重し認め合う精神があります。
批判を恐れて個性を押し殺す必要がなくなるため、従業員一人ひとりが「もっと良いものを生み出そう」というマインドへと変化し、自ら進んで学習したり、仲間のために尽力するようになるのです。
また失敗を恐れずに発言できる環境は、新たな気づきや発見がチーム内で生まれやすく、結果的にチーム全体のパフォーマンスが向上します。
2. 自由に議論できてイノベーションが推進される
心理的安全性が保たれた職場では、誰もが安心して発言できるため、さまざまな方向から多くのアイデアが集まります。そのため、これまで発言の機会が少なかった人から革新的なアイデアが生まれる可能性があります。
こうした新たなアイデアの創出は、新規事業の開拓や企業のイノベーションにもつながるのです。
3. 会社に対するエンゲージメントが向上する
エンゲージメントとは、従業員が仕事や職場に対してもつ積極的な関与や熱意のことです。具体的には、仕事に対する情熱や企業の目標達成への貢献意欲の高さを表します。
心理的安全性が高まると、「この会社でもっと働きたい」「尽力したい」と感じる従業員が増え、チームワークが向上します。
エンゲージメントが高まることで、離職率も低くなるため、優秀な人材の流出を防ぐ効果も期待できるでしょう。
4. 従業員のストレスが軽減する
発言を我慢せず、安心してコミュニケーションがとれる職場では、人間関係によるストレスも少なくなります。また、相手の考えがわからないことによる不安も軽減されます。
問題や課題が発生しても、安心して相談できる環境があれば、一人で抱え込むことや負担を感じることが減るため、従業員はメンタルヘルスを保ちながら仕事に取り組めるでしょう。
5. 従業員の帰属意識が向上する
帰属意識とは、「自分がある集団に属している、またはその集団の一員であるという意識や感覚」のことです。会社などの集団においては、目標達成に向けて行動し、責任を持って所属し続けたいと感じることを意味します。
心理的安全性が高まると、従業員のモチベーションが向上し、自分の意見が尊重されることで、組織への帰属意識や責任感も強くなります。
心理的安全性を計測する質問方法と部下や職場のサイン
ここでは、心理的安全性を計測するための質問方法と、部下や職場の心理的安全性を示すサインについて解説します。
職場のコミュニケーションと信頼関係を向上させる手がかりになりますので、ぜひ参考にしてください。
エドモンドソンの7つの質問
心理的安全性を提唱したエドモンソン教授の評価項目を参考に、心理的安全性を測る方法として7つの質問をご紹介します。
【エドモンドソンの7つの質問】
Q1. チーム内でミスをするとたいていの場合、非難される
Q2. チーム内では難しい問題や課題を互いに指摘し合える
Q3. チームメンバーの中に、異質な個性を理由に挙げて他者を拒絶する人がいる
Q4. チーム内でリスクの高い発言や行動をとっても安全だと感じられる
Q5. ほかのメンバーに助けを求めることは難しい
Q6. チーム内の誰もが、他者を意図的に陥れるような行動をしない
Q7. チームメンバーと働く際、自分のスキルや能力が尊重され、仕事に活かせていると感じられる
引用元:エドモンドソン教授の1999年の論文
心理的安全性は抽象的な概念ですが、定量化して可視化することで現状を把握しやすくなり、改善に向けた対策も立てやすくなります。
心理的安全性を測定するには、7つの質問に対して「まったくその通り」から「まったくその通りでない」までの7段階で回答してもらいます。
- Q1、Q3、Q5はスコアが低いほうが良いと判断
- Q2、Q4、Q6、Q7はスコアが高いほうが良いと判断
なお、アンケートに本名を記載すると、メンバーが本音で回答しにくくなる可能性があります。チームの正しい現状を把握するためには、匿名で実施するのが望ましいでしょう。
ギャラップ社の12つの質問
組織のエンゲージメントを測るツールとして、アメリカ最大の調査会社ギャラップ社が実施する「エンゲージメント・サーベイ」があります。
この調査は、全世界で1,300万人以上のビジネスパーソンを対象に調査した膨大なデータから導き出された、エンゲージメントを測るための調査方法です。
ギャラップが開発したエンゲージメント調査項目は次のとおりです。
Q1. 私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている
Q2. 私は自分がきちんと仕事をするために必要なリソースや設備を持っている
Q3. 私は仕事をする上で、自分の最も得意なことをする機会が毎日ある
Q4. この1週間で、良い仕事をしていることを褒められたり、認められたりした
Q5. 上司あるいは職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれていると感じる
Q6. 仕事上で、自分の成長を後押ししてくれる人がいる
Q7. 仕事上で、自分の意見が取り入れられているように思われる
Q8. 会社が掲げているミッションや目的は、自分の仕事が重要なものであると感じさせてくれる
Q9. 私の同僚は、質の高い仕事をするよう真剣に取り組んでいる
Q10. 仕事上で最高の友人と呼べる人がいる
Q11. この半年の間に、職場の誰かが私の仕事の成長度合について話してくれたことがある
Q12. 私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った
引用元:ギャラップ社の12つの質問
これらの質問も7段階で回答し、その結果を集計することで、従業員のエンゲージメントを測定できます。
質問内容をみると、エンゲージメントを左右する大きな要因が上司であることがわかります。
上司が部下一人ひとりに深く関わり、コミュニケーションをしっかり取ることで、エンゲージメントサーベイの結果が改善し、業績も向上するでしょう。
心理的安全性が高いことを示す3つのサイン
職場を管理する上司からみた、心理的安全性を測るサインがあります。こちらもエドモンドソン教授が提唱したもので、以下の3つのサインをあげています。
1. 部下が次の4つのポジティブな言葉を口にする
1つめは、次の4つのポジティブな発言がみられることです。
- 互いに尊敬し合っている
- 問題が起これば、全員でそれに取り組む
- 職場内の誰もが、プロジェクトに責任を持っている
- 職場ではありのままの自分でいられる
ポジティブな言葉が多い職場では、誰かがミスをしても仲間同士でフォローしようという意識が高まります。
お互いに助け合うことで強い信頼関係が築かれ、協力して良い結果を出せるチームワークが生まれるでしょう。
2. 部下は成功だけでなく失敗や問題についても話題にする
仕事をしていく上で失敗はつきものです。ただ失敗したメンバーを責めるのではなく、どうすれば今後同じミスを防げるかを話し合うことが大切です。
失敗しても正直に話せる職場では、部下が安心して問題を共有できるため、心理的安全性が高いといえます。
3. 職場はいつも笑いとユーモアにあふれている
職場は真面目で真剣な場と思われがちですが、ユーモアや笑いがあふれる職場は、信頼関係を築く力をもっています。
普段は真剣に仕事に取り組みながらも、息抜きの時にはリラックスして笑顔でコミュニケーションを楽しめる環境は、心理的安全性が高いといえるでしょう。
企業が心理的安全性を高める方法5つ
それでは、実際に心理的安全性を高める方法について5つお伝えします。
- 多様性を受け入れる姿勢を持つ(オープンマインド)
- 失敗してもチームメンバーを責めない
- 信頼関係を築く
- 安心感と責任感が両立した組織をつくる
- 賞賛を目に見える形で送り合う
心理的安全性を高めるためには、まずオープンマインドをもつことが重要です。
多様な考え方やバックグラウンドを受け入れられるため、他人を批判することなく、自分自身も率直に意見を述べられます。このようなマインドセットをもつことで、社内全体がさまざまな視点から意見を出し合う環境が構築され、心理的安全性が高まります。
また、何か失敗が起きたとしてもチームメンバーを責めるのではなく、チーム全体で話し合い解決方法に焦点を当てましょう。こうすることで、従業員同士の信頼関係が強化されます。
さらに相手に対する賞賛や感謝を目に見える形で表すことで、安心感と責任感が両立した組織が形成されます。ピアボーナスなどの制度を活用して、お互いに承認し合いましょう。
心理的安全性を向上させる具体的な施策10選
それでは、心理的安全性を向上させる具体的な施策をみていきましょう。
- 従業員同士でサポートし合う関係づくり
- 誰でも意見がいえる環境づくり
- 1on1の実践
- 価値観の受容
- 共通認識をすり合わせる
- ピアボーナスの導入
- サポートを意識したマネージャーの設置
- OKRの設定
- 弱みを受容する環境づくり
- 新人のフォロー体制づくり
心理的安全性を高めるためには、従業員同士でのサポートが欠かせません。お互いの長所や短所を理解し、協力し合うことでチーム全体の協調性が高まります。
また、自由に意見を述べられる環境を整えることも大切です。急に上司の前で意見を述べるのは難しいかもしれませんが、1on1ミーティングを活用することでお互いをより深く理解し合い、信頼関係が築けます。
さらにお互いの価値観を尊重し合うことや、共通の理解も重要です。相手の意見や価値観を受け入れ、認識のズレを防ぐためにも、定期的にコミュニケーションを取りましょう。
他にもマネージャーの設置やOKRの設定、弱みを受け入れる環境づくり、新人のフォロー体制構築などの施策を通じて、心理的安全性が高い職場環境を実現しましょう。
【コラム】心理的安全性が高い組織と「ぬるま湯」組織の違い
心理的安全性が高いことを「仲良しクラブ」や「居心地が良い」などの状態と混同すると、本来の意味から逸脱してしまいます。
日本の文化では「空気を読む」ことが大切だとされますが、そのために自分の意見を言いにくくなり、ミスが発生するといったデメリットが生じる可能性があります。
もちろん職場の人間関係が良好なのは良いことですが、居心地の良さを維持するために、対立を避けたり、相手の間違いを指摘しなかったりするぬるま湯組織にならないように気をつけましょう。
次の表では、心理的安全性が高い状態とぬるま湯組織の違いをまとめました。自分の職場やチームがどちらに該当するか、比較してみてください。
心理的安全性が高い職場の特徴 |
ぬるま湯組織の特徴 |
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PHONE APPLIが実践している「従業員のエンゲージメントを高める取り組み」について
ここでは、当社 株式会社PHONE APPLIの取り組みをご紹介します。当社では、2018年から「従業員が健康でいきいきと働いている」状態を目指し、「ウェルビーイング経営」を推進してきました。下記の事柄を主軸としたウェルビーイング施策を行っています。
従業員間で感謝や称賛を"贈りあう"「PHONE APPLI THANKS」の活用
「PHONE APPLI THANKS」は、従業員間で感謝や称賛を"贈りあい"、組織のパフォーマンスを向上させるウェルビーイング経営推進サービスです。日々の業務の中で感じた感謝や称賛をカードにして"贈りあう"ことで、従業員それぞれの様子が見えるようになり、認め合う組織風土を育むことができます。
【PHONE APPLI THANKSの特長】
- 日々で感じた感謝や称賛をメッセージにして送り合える
- やりとりがオープンに表示されるため社員の活躍を把握しやすい
- メッセージカードに「いいね」を押すことができる
組織の幸福度を測定する「Well-being Company Survey」の活用
- Well-being Company Survey とは、幸福経営学研究の第一人者ホワイト企業大賞委員長である天外伺朗氏と慶応義塾大学 前野隆司教授協力のもと、 PHONE APPLI が開発したパルスサーベイです。
Well-being Company Surveyの詳細はこちら
「1on1ツール」を活用し、週25分の対話でメンバーの状態を把握
- 1on1ツールで現在の体調・仕事量・モチベーションを回答し、話したいトピックを選択します。それにより、マネージャーがメンバーの状態を把握しやすくなり、1on1の質が高まりました。また、全社横断での1on1も積極的に実施しています。組織横断コミュニケーションを意識的に増やすことで、精神的・社会的健康の向上を目指しています。
ウォーキングイベント「PA Walking Cup」で運動習慣の定着化
運動習慣の定着を目的としたウォーキングイベント毎月開催しています。従業員が楽しく参加できるよう、季節ごとのテーマやゲーミフィケーションを取り入れながら工夫しています。
年齢制限なしの保健指導で若年層の健康リスクにも対応
40歳以上の特定保健指導対象者だけでなく、39歳以下の生活習慣病予備群にも年齢制限を設けずに保健指導を実施しています。将来の疾病リスクを低減し、特定保健指導対象者の若年層からの流入抑制を目指しています。
【まとめ】心理的安全性を高めるメリットについて
本記事では、心理的安全性を高めるメリットについて解説してきました。
- 失敗を恐れずに発言できる環境は、新たな気づきや発見がチーム内で生まれやすくなり、結果的にチーム全体のパフォーマンスが向上する
- 心理的安全性が保たれた職場では、多様な価値観からさまざまな意見やアイデアが生まれ、イノベーションが創造されやすい
- 心理的安全性が高ければ、安心してコミュニケーションを取れるようになるため、人間関係によるストレスも少なくなる
心理的安全性を高めるには、誰もが安心して発言できる環境をつくることが重要です。自分の意見をいえることで、チームの協調性が高まり、組織全体の一体感が生まれます。活発な意見交換が行われる職場では、今後の競争力も大きく向上するでしょう。
心理的安全性を高め、信頼関係の基盤を築くために、ぜひ本記事をご活用ください。