人的資本経営

人材ポートフォリオの作り方|作成時の注意点やメリットを解説

  • 人材ポートフォリオを効果的に作成する方法を知りたい
  • そもそも人材ポートフォリオとはどんなものなのかわからない
  • 人材ポートフォリオを作るメリットやコツを知りたい

人材ポートフォリオとは、「社内のどこに、どのようなスキル・特性を持った人材が、どのくらいの人数がいるのか」を示したものです。人材ポートフォリオを作成することで、企業が必要とする人材の構成を可視化し、採用や人員配置、評価を最適化する手助けになります。。

しかし、人材ポートフォリオをどのように作成していいのか悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで本記事では、人材ポートフォリオについて、次のポイントを中心にお伝えします。


本記事が、貴社で人材ポートフォリオを作成する際の一助となれば幸いです。

人材ポートフォリオの作り方

さっそく、人材ポートフォリオ作成の大まかな流れをご紹介します。詳細な分析や設計は専門のコンサルタントに依頼する場合もあるかと思いますが、自社でも把握できるようにしておきましょう。

また、人材ポートフォリオは大企業のものだけではありません。人的資本が限られている中小企業こそ、人材ポートフォリオの作成は必要です。

従業員一人ひとりのポテンシャルを最大限に活かし、不要なコストを削減することが経営上重要のため、しっかり確認しましょう。

1. 活用の目的を明確にする

人材ポートフォリオを作る前に、まずは活用目的をはっきりさせることが重要です。人材ポートフォリオ作成は、自社が求める成長や目標を達成するために、どのような人材が必要なのかを理解するのに役立ちます。

たとえば、新規事業に対応できる人材が足りない場合、その強化を目指すことが目的となります。目的が明確であれば、どのような情報を集めるべきか、どう分析すればいいのかがわかってくるのです。

これにより、適切な人材配置や育成計画が立てやすくなり、無駄のない人材管理ができます。

2. 必要な人材をタイプで分類する

次に、企業の目標達成に必要な人材をタイプ別に分類します。現時点で分類できるタイプに分けるのではなく、活用目的に対して有効な結果になるよう分類することが大切です。

人材を分類する方法として一般的なのが、2軸・4象限による分け方です。

設計で使われる4象限

最も一般的で汎用性の高いとされる分類方法は、「組織・個人」と「運用・創造」の2軸・4現象です。

「個人でする仕事が得意か」「組織でする仕事が得意か」を縦軸に、「既存の仕組みの維持や運用(ルーティン)が得意か」「新たな事業や商品の創造(クリエイティブ)が得意か」を横軸に組み合わせ設定します。

たとえば、次のような分類の人材が考えられます。

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  • 「組織×創造」:事業戦略などを構築する「マネジメント人材」
  • 「組織×運用」:チームを管理する「オペレーション人材」
  • 「個人×創造」:新しい商品や技術などを生み出す「クリエイティブ人材」
  • 「個人×運用」:専門性の高い業務をこなす「エキスパート人材

ただし、この分類は一例です。会社の状況や目的に合わせて、独自の分類方法を考えるのもよいでしょう。

たとえば、「若年層・中年層」「正規・非正規雇用」、「総合職・専門職」「常時雇用・臨時雇用」などでも分類できます。大切なのは、会社にとって意味のある分類をすることです。

3. 人材をそれぞれのタイプに当てはめる

分類したタイプを決めたら、実際の社員を当てはめていきましょう。

このステップで重要なのは、客観的で信頼できるデータに基づいて分類することです。主観的な判断で分類するのは、人材のミスマッチなどが起こるリスクが高くなります。

日々の業務評価やアンケート、適性検査などを従業員が納得しやすいデータを活用しましょう。正確なデータに基づいて、適切なタイプに分類することで、個々の成長や企業全体のパフォーマンス向上につながります。

4. タイプに偏りがないかチェックする

人材をタイプに分類した後、それらのタイプに偏りがないか全体のバランスを確認します。特定のタイプが多すぎたり、逆に少なすぎたりすると、企業のバランスが崩れ効率的な業務運営が難しくなるからです。

たとえば、リーダーシップを発揮できる人材が少ない場合、将来的な管理職不足が懸念されます。このチェックにより、今後の採用や育成の方針を調整することが可能です。

5. 余剰または不足するタイプの解消手段を考える

人材の偏りがわかったら、余剰または不足する人材タイプに対して、解消手段を考えましょう。この対応策は、長期的な視点で企業の成長を支えるために不可欠です。

余剰がある場合は、配置転換や新しいプロジェクトへのアサインを検討します。不足している場合は、新規採用や既存社員の育成プランを立てましょう。

必要に応じて、配置転換や育成、採用、退出・解雇などの施策をおこないます。これにより、企業全体の人材バランスが整い、より強力なチームを作れます。

人材ポートフォリオを作成するうえでの注意点

人材ポートフォリオを作成する際に、気をつけるべき点があります。ここでは5つの注意点をご紹介します。

1. 個人の特性や能力を正しく把握する

人材ポートフォリオの基礎となるのは、従業員一人ひとりの特性や能力を正確に理解することです。主観で判断するなど適切な評価がなされないと、誤った配置や育成計画が生まれ、組織全体のパフォーマンスに悪影響を与えます。

客観的なデータや、日々の観察を組み合わせることで、各従業員の強みや弱みをしっかりと把握することが重要です。丁寧に取り組むことで、より実効性の高い人材ポートフォリオが作成できるでしょう。

2. 人材ポートフォリオの対象や軸に優劣をつけない

人材ポートフォリオで従業員をさまざまな軸で分類するとき、これらに優劣をつけないことに注意しましょう。どのタイプの人材も、企業にとって価値があり、それぞれの役割があります。

たとえば、営業成績が優秀な人だけが優れているわけではありません。チームの雰囲気を良くする人も重要な役割を果たしています。偏見や固定観念を避け、すべてのタイプの従業員が最大限に活躍できる環境を整えることが大切です。

3. 組織の変化に合わせて迅速に反映する

組織の状況やビジネス環境は常に変わります。人材ポートフォリオも一度作成して終わりではなく、変化に応じて、迅速な見直しや更新が必要です。

たとえば、新たなプロジェクトが始まると、必要なスキルセットが変わるかもしれません。また、組織の成長に伴い、リーダーシップの重要性が増すことも考えられます。

変化に沿ってポートフォリオを再評価し、迅速に反映させることを怠らないことが大切です。そうすることで、組織全体の適応力を高められます。

4. 人材ポートフォリオ作成には労力や工数がかかる

人材ポートフォリオの作成には、労力と時間がかかることも認識しておきましょう。さまざまな人を巻き込みながら、従業員のデータ収集や分析、設計を考えるプロセスは、思った以上に時間と手間がかかります。

また、人材ポートフォリオを作成すれば、すぐに効果が現れるものでもありません。作成後、分析し適切な配置を考えるなど、人事制度に活かすことまでが一括りです。

しかし、この投資が長期的に見て大きな効果をもたらします。長期的な運用が必要なことを念頭におき、計画的に取り組むことで、組織全体の強化に繋げましょう。

5. 従業員の意思や要望も反映する

ポートフォリオ作成の際には、従業員の意見や希望も取り入れることが重要です。なぜなら、従業員のモチベーションやキャリアパスを無視しては、真の人材活用はできません。

企業側だけでなく、従業員自身がどう成長したいのか、どのようなキャリアを築きたいのかを、面談やアンケートを通して理解しましょう。それを反映させることで、モチベーションが高まり、組織全体のエンゲージメントも向上します。

6. タレントマネジメントも並行する

人材ポートフォリオと並行して、タレントマネジメントも進めましょう。人材ポートフォリオはあくまで現状の把握ですが、タレントマネジメントは将来のリーダーや専門家を育てるための計画です。

両者をバランス良く取り組むことで、適材適所の配置、スキル開発、キャリアパスの設計などを総合的に実施できます。戦略的な人材活用をすることで、組織の持続的な成長を支える基盤が築かれるのです。

人材ポートフォリオを作成するメリット5つ

企業が人材ポートフォリオを作成することには、次のようなメリットがあります。メリットを理解して、自社への活用を検討しましょう。

  1. 自社の人材が明確になる
  2. 適材適所の人材配置ができる
  3. 従業員のキャリア支援ができる
  4. 人材の過不足が把握できる
  5. 採用コストなどの人件費を削減できる

1. 自社の人材が明確になる

人材ポートフォリオによって、従業員の強みや弱み、仕事に対する向き合い方、思い描くキャリアなどを見える化できます。

一人ひとりの特性が明確になることで、これまで気づけなかったスキルが見つかる可能性もあるでしょう。また従業員の思考の偏りに気づくきっかけにもなります。

2. 適材適所の人材配置ができる

人材ポートフォリオによって従業員の特性が明確になれば、それを活かした適材適所な人材配置が可能です。従業員の特性に合った業務にアサインできたり、思い描くキャリアを達成できる部署に異動させたりと柔軟に対応できます。

従業員一人ひとりの特性や希望にマッチした人材配置をすることは、組織全体の生産性向上にもつながります。

3. 従業員のキャリア支援ができる

人材ポートフォリオでは、従業員が思い描くキャリアも可視化できます。今いる会社でどのようなスキルを身につけてどこまで成長したいのか、転職や独立を見据えているのかなど、細かく把握可能です。

そのため企業は、従業員の理想のキャリアに沿った支援ができます。たとえば、スキルアップや異動の希望に対応することで、最終的には従業員エンゲージメントの向上につながります。

4. 人材の過不足が把握できる

人材ポートフォリオでは、どの部署に誰がいるのか、人材過多または人材不足などの人材状況をひと目で把握できます。

たとえば、従業員が多すぎる部署から少ない部署に異動させたり、少ない部署にはベテランやスキルの高い従業員を配属させたりといった対応が可能です。常に自社の人材状況を把握して、人材配置を最適化できます。

5. 採用コストなどの人件費を削減できる

人材ポートフォリオによって人材状況や従業員の特性を把握できれば、それに従って最適な人材配置が可能です。人員数の偏りや部署と個人のミスマッチを防げるため、「無駄な採用」をせずに済み、採用コストの削減にもつながります。

【コラム】人材ポートフォリオとスキルマップの違い

人材ポートフォリオと似た言葉で、スキルマップを聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。どちらも人材マネジメントを支援するツールですが、目的や使用方法に違いがあります。

人材ポートフォリオは、社員の全体的な能力や可能性を見極めるためのものであり、組織全体の人材戦略を立てる際に使います。一方、スキルマップは、特定のスキルに焦点を当て現在のスキル状況を把握し、特定の分野での強化が必要な部分を明確にするためのツールです。

これらを組み合わせることで、より効果的な人事戦略が可能です。たとえば、新しいプロジェクトを始める際には、スキルマップを使って必要なスキルを持つ社員を特定し、ポートフォリオでその社員のキャリアや意欲も考慮して適切な配置を行えます。

このように、人材ポートフォリオとスキルマップは相互に補完し合う関係にあり、企業の成長を支える強力なツールとなります。

スキルマップとは、従業員のスキルとレベルを記載した一覧表

スキルマップを簡単にいうと、従業員のスキルとレベルを記載した一覧表のことです。どの社員がどのスキルを持っているか、そのスキルレベルがどの程度かを視覚的に示します。

スキルマップの作成には、厚生労働省から提供されているスキルマップのフォーマット(下図・例)を活用してもいいでしょう。

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スキルマップを作成する際、目的と活用方法を決めて従業員をサポートするのが大事です。スキルマップは従業員の育成に有効なツールです。スキルマップを活用し、従業員の能力を最大限に引き出すための教育施策を実施しましょう。

【ツール紹介】人的資本経営で必要な人材スキルの可視化に役立つ「PHONE APPLI PEOPLE」の特長や機能とは

導入企業

PHONE APPLI PEOPLE

適切な人事管理を行うためには、従業員の情報を一元管理できるツールが必要です。それを実現できるツールとして、当社では「PHONE APPLI PEOPLE」を提供しています。

PHONE APPLI PEOPLEでは、電話帳、社内イントラネットといった機能をPCやスマートフォンなどデバイスを問わずに利用できます。「マイプロフィール機能」では、従業員個人のスキルや経験、パーソナリティ情報なども公開可能です。人事管理に求められる「適切な評価」や「適材適所の人材配置」にも役立てられます。




【まとめ】人材ポートフォリオの作り方について

本記事では、人材ポートフォリオの作り方について、次のポイントを中心にお伝えしました。

  • 人材ポートフォリオは、活用目的を明確にすることから始まり、余剰や不足するタイプの人材解消を考えるまでの5ステップで作成する
  • 人材ポートフォリオを作成する際は、客観的で正しい特製の把握や優劣をつけないこと、状況変化に合わせて反映するなど、注意点が複数ある
  • 人材ポートフォリオのメリットは、自社人材の明確化や適材適所の人材配置、人件費の削減など、数多くある

自社の人材を客観視できる人材ポートフォリオは、自社の事業戦略や人材戦略に有効です。作成し分析、アクションを実行するには、時間や労力がかかりますが、企業成長には欠かせないでしょう。

本記事が、人材ポートフォリオを作成するための参考として役立てていただけたら幸いです。



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