人的資本経営が企業にもたらすメリットとは?直面しやすい課題や参考事例を紹介
- 人的資本経営にはどのようなメリットがあるのか
- 人的資本経営を行う上で気をつけるべきことは?
- 人的資本経営の施策や課題についてイメージを掴んでおきたい
人的資本経営は、端的にいえば「従業員を大切にする経営」です。人的資本経営を行うことで、企業が従業員の価値を高め、組織全体の価値やブランディング向上を目指します。
しかしながら、何のために人的資本経営を行うのか、自社にとって何のメリットがあるのか、イメージを掴めていない方もいるかと思います。そこで本記事では、人的資本に関して次の項目を解説します。
- 【この記事でわかること】
- 人的資本経営で得られるメリット
- 人的資本経営が重要視される背景
- 人的資本経営の課題とポイント
ぜひ本記事を参考にして、人的資本経営ついての理解を深めましょう。なお人的資本について基本的な内容を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
人的資本経営が企業にもたらす5つのメリット
人的資本経営が企業にもたらすメリットとして、次の5つがあげられます。
- 従業員の能力を可視化できる
- 従業員のエンゲージメントが向上する
- 生産性が向上する
- 企業のブランド価値が上がる
- ステークホルダーからの評価が上がる
1. 従業員の能力を可視化できる
人的資本経営では、従業員一人ひとりの知識やスキルに合わせて教育します。本人に合った形で能力向上やキャリア形成を行うため、「能力の可視化」が必要です。一人ひとりの能力が見える化されることで、適材適所に人材を配置するのに役立ちます、不足している人材をピンポイントで採用しやすくなります。
2. 従業員のエンゲージメントが向上する
企業が人的資本経営を行えば、その姿勢は従業員にも伝わりやすくなります。従業員も「会社が自分たちのことを考えてくれている」と意識するようになるので、エンゲージメント向上につながります。自社に対する帰属意識が高まり、「この会社でキャリアを形成したい」「会社に貢献したい」という従業員も増えるでしょう。
3. 生産性が向上する
人的資本経営は、端的にいえば「人材への投資」を促進する経営です。従業員の能力開発やキャリア形成を重視するため、個人だけでなく、チーム・組織としての生産性向上も期待できます。企業と従業員がともに成長できる良いサイクルが生まれるでしょう。
4. 企業のブランド価値が上がる
人的資本経営を進めることで、株主や取引先、顧客などステークホルダーからの社会的信頼が高まります。社会的信頼が高まれば、株価が上がったり、世間からの印象が良くなったりするので、企業価値の向上につながります。企業価値が高くなれば、優秀な人材も集まりやすくなるでしょう。
5. ステークホルダーからの評価が上がる
株主や投資家などのステークホルダーにとって、企業が人的資本経営を行っているかどうかは重要な指標です。人的資本経営に前向きな企業は、社会的評価が高いため、ステークホルダーからの「投資対象」として選ばれやすくなります。投資金額が大きければ、企業も事業投資に踏み切れるので、商品やサービスの品質も向上しやすいです。
人的資本経営が重要視される背景
人的資本経営が重要視されているのか、その理由を見ていきましょう。経済産業省による報告書「人材版伊藤レポート」を参考にすると、人的資本経営の計画がスムーズに進みます。人材版伊藤レポートでは、人的資本経営をどのように具体化し、実践していくかが説かれています。
ESG投資の重要性の高まり
ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の略語です。世界的に環境問題や社会問題への関心が高まっている中で、ESG投資に取り組む企業が増えています。これまでは財務データだけで投資判断をしていましたが、環境汚染や労働環境の問題が浮き彫りになったことで、BSGに配慮した経営に力を入れる企業が注目を集めています。
人材・働き方の多様化
現在の日本では、非正規雇用や外国人従業員が増え、テレワークやフレックスタイム、SDGs(持続可能な開発目標)への意識など、働き方が多様化しています。働き方の多様化によって一律の人材管理では対応できないケースが増え、企業も働き方を変えざるを得なくなっているのです。
そのような社会の流れもあり、従業員一人ひとりの状況に合わせて働き方を考える企業も出てくるようになります。個々の能力を最大限に活かす「人的資本経営」が重要視されています。
無形資産の価値向上
人的資本が重要視される背景として、「無形資産」の価値向上があります。その名の通り無形資産とは、人的資本やノウハウなど形のない資産のことです。これまでの会社経営では、現金や商品在庫、建物、機械など「有形資産」が重要視されていましたが、リーマンショックによって風向きが大きく変化しました。
金銭的な価値は見えても、企業の労働環境や従業員の満足度が見えない、といった理由から、無形資産で企業を判断するステークホルダーが増えたのです。
人的資本経営の課題とポイント
企業や従業員にとってメリットの多い人的資本経営ですが、課題もあります。とくに意識したい課題は以下の2つです。
課題1. 実現までにコストや時間がかかる
人的資本経営を実現するには時間やコストがかかります。
たとえば、従業員が働きやすい環境を作るためにフレックスタイム制を導入するとします。その場合、オフィス外にいる従業員と連携を取るためにコミュニケーションツールの導入が必要です。当然、ツールの導入や運用には多少のコストがかかります。
また、働きやすい環境を作っても、それが従業員に浸透するまでには時間もかかります。浸透させるためには、研修や教育を行う必要もあるでしょう。
課題2. 予定通りの成果が得られるとは限らない
人的資本経営の一環として自社の評価制度や働き方を変えても、思ったとおりの成果が得られるとは限りません。場合によっては、従業員から反発や不満の声が出てくることもあるでしょう。そもそも施策自体が自社に合っていない可能性もあります。
Point1. 人的資本開示そのものを目的にしない
人的資本経営では、人的資本の情報開示が義務付けられていますが、「開示」そのものが目的にならないよう注意しましょう。たしかに情報開示をすれば「人的資本経営をしている企業」として見られますが、実際に従業員が満足していなければ意味がありません。
情報を開示するとともに、従業員にとって、組織にとって本当に意味のある施策が行えているのか、実体を見ることが大切です。
Point2. 自社ならではのゴールを決める
人的資本経営の課題解決には、ゴール設定も重要です。KPI(目標の達成状況を確認する指標)やOKR(目標や結果を把握する指標)などを用いながら、ゴールを設定しましょう。ただし、ガイドラインの内容をそのまま使うと、他社と似た内容になってしまいます。自社ならではのゴール設定が大切です。
Point3. 経営課題と人材戦略を関連づける
経営課題と人材戦略を紐づけることも大切です。経営課題の大枠を掴み、人材戦略で解像度を高めるイメージです。たとえば「離職率が高い」が経営課題の場合、「残業時間を見直し、従業員の労働環境に対する満足度を高める」を人材戦略として設定します。
まずは、組織全体の課題を把握し、優先順位をつけましょう。その課題が人材戦略の観点から解決できないか探ることが大切です。
【ツール紹介】人的資本経営で必要な人材スキルの可視化ができる「PHONE APPLI PEOPLE」の特長や機能とは
従業員のスキルを可視化するためには、これらの情報を一元管理するツールが必要です。PHONE APPLI PEOPLEは、皆さんが連絡を取るために普段使いする電話帳、社内イントラネットのような用途で使われるサービスです。社内のメンバー同士のつながりを高めるために個々のメンバーが持つスキルや経験、パーソナリティ情報などを自己開示しあい、相互理解を深め、心理的な距離を縮めて、活発な協働を促すことが可能です。
さらに詳しい方法についてこちらの資料でも解説しております。資料ダウンロードは無料なのでぜひ、こちらをご覧いただけますと幸いです。
【事例紹介】株式会社丸井グループ|男女の多様性を実現する「女性イキイキ指数」を記載
【引用】 丸井グループ
株式会社丸井グループはファッションビルの「丸井」をはじめ、ファッション物流、フィンテックまで幅広い事業を展開する会社です。同社では「人の成長=企業の成長」と捉え、人的資本経営を行っています。具体的には「女性イキイキ指数」というKPIを実施。従業員4435名(2023年3月時点)のうち約45%が女性であることを活かし、女性従業員の活躍度合いやリーダー育成、上位職志向などを数値化しています。指数によって人的資本を定量的に開示できることに加え、「女性従業員が多い」「女性に特化したKPIを実施」というストーリー性も生まれている事例です。
【まとめ】人的資本経営が企業にもたらすメリットについて
本記事では、人的資本経営のメリットを中心に以下のポイントを解説しました。
- 人的資本経営を行うことで、従業員エンゲージメントや企業ブランド価値、ステークホルダーからの評価などが高まりやすい
- 人的資本経営が重要視される背景として、ESG投資や人材・働き方の多様化、無形資産の価値向上がある
- 人的資本経営そのものを目的とせず、経営課題と人材戦略をづけて自社ならではのゴールを決めることが大切
人的資本経営の実現は、個人のエンゲージメント向上のほか、組織全体の生産性向上、ブランディングにもつながります。本記事の内容が、人的資本経営にお役立ちできることを願っています。