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人的資本経営で求められるダイバーシティ&インクルージョンとは?企業が抱えやすい課題も解説

  • ダイバーシティ&インクルージョンを詳しく知りたい
  • どんな課題があるのか知りたい
  • 推進を成功させる施策を知りたい

人材を資本として捉える人的資本経営では、ダイバーシティ&インクルージョンは欠かせません。ダイバーシティ&インクルージョンとは、性別や国籍、価値観などに囚われず多様性を認め、その個性を活かしていくことです。重要なことはわかるがどうやって取り組めばいいのかわからない、と悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事では、ダイバーシティ&インクルージョンについて、次のポイントを中心にお伝えします。



なお、人的資本経営について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を一言で言うと、「人々の多様性に対応した活躍の場を提供する」ことです。ダイバーシティ(多様性)とは、性別や年齢、国籍などの違いを尊重することですが、企業ではそれだけでなくインクルージョン(包括や受容)して活用することも求められるようになりました。

2020年9月の「人材版伊藤レポート2.0」では、ダイバーシティについて次のように言及されています。

中長期的な企業価値向上のためには、非連続的なイノベーションを生み出すことが重要であり、その原動力となるのは、多様な個人の掛け合わせである。このため専門性や経験、感性、価値観といった知と経験のダイバーシティを積極的に取り込むことが必要となる。

多様性が求められる理由

多様性が求められるようになった背景には、主に次の2つがあります。

労働人口の減少により労働力を確保するため

今や企業の経営課題ともなっている労働力の確保には、多様性が求められています。内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」によると、日本は少子高齢化により労働人口が、1995年をピークに減少しています。そのため、人手不足に直面している企業も少なくありません。その解決策として、たとえば子育て中の女性や外国人、セカンドキャリアを狙うシニアなどが働きやすい職場環境を作ることがあげられます。

消費者ニーズの多様化・グローバル化に応えるため

また、企業はさまざまな消費者ニーズに応えるために、多様性が求められます。ビジネス環境が絶え間なく変化する中で企業価値を向上させるには、アイデアやイノベーションが必要不可欠だからです。

令和5年6月末の在留外国人数は322万人以上であることより、企業の海外進出の増加が進んでいます。企業が選ばれるには、国籍問わず多様な感性、価値観を有する人材を積極的に取り込み、各国の特性・ニーズを図ることが欠かせません。

日本が抱える現状

日本でもダイバーシティは推進されてきていますが、世界基準と比べると進捗が遅れている状況です。ここでは日本が抱える現状を5つお伝えします。

PBR(株価純資本倍率)が1倍以下の企業が4割

日本の上場企業の4割がPBR1.0倍以下という状況です。PBRとは、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかをみる投資尺度。1倍未満のPBRは「株式価値<解散価値」を表し、企業の市場評価や成長への期待が低いことを意味しています。

2023年に東京証券取引所が挙げた会議資料では、人的資本投資もPBR1倍割れの具体的な対策の1つとされています。

企業・官公庁の管理職に占める女性の割合は12.7%

2022年度の厚生労働省の資料によると、2022年度の役員・管理職に占める女性の割合は、12.7%(部長相当職以上は12.0%)にとどまっています。また、男性の育児休業取得率が17.1%と極端に低いこともわかりました。性別関係なく働きやすい環境を整えることが、日本企業全体の課題といえます。

ジェンダー・ギャップ指数は156か国中120位

日本のジェンダー・ギャップ指数は世界と比べて低いです。2021年は156か国中120位で、主要7か国(G7)の中でも最低の順位でした。ここまで順位が低い理由の1つに、「無意識の偏見」が根強く残っていることがあります。たとえば男性を多く採用したり、役職者への昇進が有利と偏った考えで経営方針が決まっている企業も多いです。

約4割の高齢者が「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答

内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」によると、現在仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答したことがわかりました。

しかしながら、70歳以上まで働ける制度のある企業は4割ほどで、定年制を廃止している企業は約4%にとどまります。

障害者雇用促進法で定められた雇用率が未達の企業は49.9%

障害者雇用促進法で定められた雇用率2.3%を達成している企業は、前年比増ですが50.1%となっています。未達成企業のうち58.6%が障害者を1人も雇用していない状況です(厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」より

ダイバーシティの推進で企業が抱えやすい5つの課題

ダイバーシティ推進を展開する中で、企業が抱えやすい課題を5つご紹介します。

1. 従業員のバイアス(思い込み)が障壁になる

ダイバーシティを推進する企業にとって、従業員のバイアス(思い込み)が障壁になる可能性があります。「偏見は持っていない」と思っていても自身が気づかずに偏った見方・考え方を持っていることが少なくありません。たとえば、女性は管理職に向いていない、シニアはパソコンが苦手など、過去の経験や価値観から無意識のうちに持ち合わせてしまっています。

企業はさまざまな意思決定において間違った判断をしないよう、従業員へ自分のバイアスを認識させ意識改革を進めることが大切です。

2. コミュニケーションが希薄になる

多様な人材と働き方により、コミュニケーションが希薄になることも課題です。コミュニケーション不足は、誤解を招いたり生産性に影響を及ぼしたりする恐れがあります。コミュニケーションが取れないと、一人ひとりがバラバラの仕事をしている印象になり、一体感が低下します。ダイバーシティがある程度浸透したからこその課題ですが、コミュニケーションの活性化が必要です。

3. パフォーマンスが低下しやすい

パフォーマンスが低下しやすくなる可能性もあります。ダイバーシティの推進は多様な人材を取り入れることにより、新たな気づきやイノベーションを起こすものです。その反面、意見の食い違いが発生しやすいのも事実です。互いへの配慮や尊重する姿勢がなく自らの常識だけを主張すれば、対立や行き違いは避けられません。

ダイバーシティ推進は、マネジメントする人材がそれぞれの意見を整理し、自社や部署に合った進め方を構築することが大切です。

4. 心理的安全性を確保しにくい

ダイバーシティには、心理的安全性を確保することが欠かせません。心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを表現できる状態のこと。多様な価値観を持つ人材が集まると、組織の中でマイノリティな人たちは萎縮してしまったり、疎外感をおぼえやすくなってしまいがちです。

属性や特徴の大小に拘らず、安心して自分の意見を発言したり自由に行動できるよう、環境を整えましょう。

5. 人事評価が複雑になりやすい

人事評価が複雑化しやすいことも課題です。従来の終身雇用や年功序列では多様化する人材や雇用にあわず、一律の評価方法は従業員の不満を招く恐れがあるでしょう。

たとえば、時短勤務だから給与は減額、フルタイムでの在宅勤務だからプロジェクトには参加できないなど。ネガティブな雰囲気を醸成させかねません。十分に人材を活かせるよう、人事評価制度の根本的な見直しが必要です。

人的資本経営でダイバーシティ推進を成功させる4つの施策

ダイバーシティ推進を成功させる施策は4つあげられます。

1. 経営陣・管理職の意識改革

従業員だけでなく、経営陣・管理職の意識改革です。ダイバーシティの促進は企業全体で取り組むことが重要で、経営層が変わらなければ新たな取り組みは浸透しません。経営陣・管理職を対象に事前研修や定期的な勉強会を行ったり、従業員の意見を聞いてみたりしましょう。

2. コミュニケーションの活性化

コミュニケーションを活性化させる施策も重要です。コミュニケーションの機会を多く持つことで、誤解や意見の食い違いを防げます。多様な人材とのコミュニケーション術や、タスクの管理方法など、幅広い研修を検討してみましょう。また、コミュニケーションを促進させるツールを活用するのもオススメです。

3. 社内制度の整備

成功には、社内制度の整備も必要不可欠です。一律のままでは不公平が生じ、従業員の不満や離職につながりかねません。全従業員に関係する評価や報酬制度などの社内制度は、混乱をきたさないよう、見直す場合は理解を得ておくことが重要です。そのためには経営層から従業員へ目的を説明し、事前に十分な周知をしておきましょう。

4. 柔軟な働き方の実現

柔軟な働き方の実現は、多彩な人材の活躍の場を提供することにもつながります。たとえば、フレックスタイム制やリモートワークを導入することで、育児や介護中の人材も仕事とプライベートのバランスを取りながら働けます。これまでは退職せざるを得なかった従業員も辞めずに活躍できるのです。別の側面では、柔軟な働き方はリテンションやエンゲージメントの相乗効果をもたらしてくれ、優秀な人材の確保にもつながるでしょう。

【ツール紹介】人的資本経営で必要な人材スキルの可視化ができる「PHONE APPLI PEOPLE」の特長や機能とは

PHONE APPLI PEOPLE

導入企業

PHONE APPLI PEOPLE

従業員のスキルを可視化するためには、これらの情報を一元管理するツールが必要です。PHONE APPLI PEOPLEは、皆さんが連絡を取るために普段使いする電話帳、社内イントラネットのような用途で使われるサービスです。社内のメンバー同士のつながりを高めるために個々のメンバーが持つスキルや経験、パーソナリティ情報などを自己開示しあい、相互理解を深め、心理的な距離を縮めて、活発な協働を促すことが可能です。
さらに詳しい方法についてこちらの資料でも解説しております。資料ダウンロードは無料なのでぜひ、こちらをご覧いただけますと幸いです。

【事例紹介】株式会社LIXIL|D&I委員会の監督もと、取締役の約30%を女性に

【引用】 株式会社LIXIL


株式会社LIXILは、住まいの夢を実現する建築材料や設備機器などの製品やサービスを提供する企業です。同社は「顧客志向の組織になるためには、社会を反映したインクルーシブな職場環境の構築が必要」という信念のもと、D&I推進を加速。企業文化としてD&Iを取り込むため、インクルージョンの実現を目指す、従業員の声に耳を傾ける、個々の力を引き出す、という3つの取り組みを実践しています。

CEOが委員長を務めるD&I委員会による監督のもと、事業全体におけるD&I施策の推進を徹底し、人事施策全体にD&I戦略を反映。そうした取り組みのおかげで、現在、LIXILの取締役の30%が女性となっています(東証一部上場企業の上位5%)。

これにとどまらず、取締役および執行役の男女比均等、ならびにグローバル全体の管理職女性比率30%の達成を目指しています。

【まとめ】人的資本経営でダイバーシティを推進させるためには

記事では、人的資本の定義や重要視される理由について、以下のポイントを中心にお伝えしました。

  • ダイバーシティ&インクルージョンは、性別や国籍、価値観などに囚われず多様性を認め、その個性を活かしていくこと
  • ダイバーシティ推進での課題は、思い込みによる障壁やコミュニケーション不足、人事評価の複雑化などがある
  • ダイバーシティ推進を成功させるには、経営層の意識改革やコミュニケーションの活性化、社内制度の整備などが重要

ダイバーシティを推進することは、人的資本経営においてメリットが大きいです。多様な人材の個性を引き出すことでイノベーションが生まれ、競合優位性のある中長期的な企業価値の向上をもたらしてくれるでしょう。本記事が、貴社の人的資本経営に取り組むための参考として役立てていただけたら幸いです

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