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人的資本経営とは?人材戦略で必要な要素、実践すべき内容についてわかりやすく解説

  • 近年注目されている人的資本経営について詳しく知りたい
  • 人的資本経営のメリットを把握したい
  • 人材戦略に必要な3つの視点と5つの共通要素とは?

人的資本経営は、人を企業の「資本」とみなし、育成や教育に投資することで企業価値を向上させる経営手法です。 従来の人的資源経営は、人を単なる「資源」とみなし、必要に応じて使用する考え方でした。しかし近年では、人材がもつ能力を一方的に消費するものではなく、将来的により多くの価値を生み出す人的資本経営が重要視されています。


ぜひ本記事をご覧になって、人的資本経営についての理解を深めてください。

人的資本経営とは?

人的資本経営は、従業員に投じる資金を「コスト」としてではなく、「投資」として考えています。従業員のスキルやモチベーションを高めることで、企業の技術革新や付加価値の向上につなげ、企業価値を上げることが目的です。

人的資本経営が重要視されたきっかけ

ここでは、人的資本経営への関心が高まるようになった理由をお伝えします。

ESG投資の重要性の高まり

ESG投資が注目される理由は、世界的に環境問題や社会問題への関心が高まっているからです。これまでは投資判断が財務データだけで行われていました。しかし、環境汚染や労働環境の問題が浮き彫りになり、ESGに配慮した経営に力を入れる企業が注目を集めています。

人材・働き方の多様化

今、日本では非正規雇用や外国人従業員が増え、時短勤務やリモートワークなど働き方が多様化しています。これにより、昔のような一律の人材管理では対応できないケースが増えています。そのため一人ひとりの状況に合わせて働き方を考え、個々の能力を最大限に活かす経営が重要視されているのです。

無形資産の価値向上

無形資産とは、形をもたない資産のこと。従業員のスキルや経験、ノウハウなどがその例です。現在、市場は製品やサービスでの差別化が難しくなり、企業価値の評価基準は信頼やブランド力などの無形資産にシフトしています。

また、従業員のスキルやモチベーションが企業の競争力に直結することも明らかになっています。そのため、企業独自のブランドやサービスなど、形を持たない価値が重要視されているのです。

人的資源と人的資本の違い

人的資源は、人は必要なときに使用される「資源」という考え方です。これまでの企業経営では、採用や育成にかかる費用は、資源の確保や維持のための「コスト」と考えられてきました。一方の人的資本は、人は組織の貴重な「資産」と考え、育成にかかる資金はそのための「投資」と位置づけられます。近年、市場環境の変化や多様性の重視が進み、個々の能力が重要視される企業経営に変化しています。

人的資本経営が企業にもたらす5つのメリット

人材の価値を引き出す人的資本経営。人的資本経営が企業にもたらすメリットは次の5つです。

  1. 従業員の能力を可視化できる
  2. 従業員のエンゲージメントが向上する
  3. 生産性が向上する
  4. 企業のブランド価値が上がる
  5. ステークホルダーからの評価が上がる

まず、人材育成を通して従業員のスキルや能力を把握しやすくなるため、適切な人材配置が可能になります。従業員のスキルアップを促すことで、モチベーションの向上や離職率の低下など、従業員のエンゲージメントの向上にもつながります。

人材育成に力を入れることで社会的信頼も得られやすく、「この企業で働きたい」と優秀な人材も集まりやすくなるでしょう。また、投資家などのステークホルダーからの注目も集まることで投資額が増え、企業の成長が期待されます。

人的資本経営の情報開示報告

人的資本の情報開示は、ステークホルダーに人的資本経営に積極的に取り組んでいることを周知する目的で行われます。企業が従業員の育成や支援に、どれだけ力を入れているかを明らかにすることで、投資家などの関係者は企業の将来性を判断できます。

有価証券報告書に記載すべき3つの項目

有価証券報告書は、企業が自社の経営状況や財務情報などを開示する書類です。これには、次の3つの項目が含まれます。

  • サステナビリティに関する考え方および取り組み
  • 人的資本、多様性に関する情報
  • コーポレートガバナンスに関する情報

サステナビリティは、社会や環境に配慮した活動を通じて、将来の持続可能性を追求する考え方です。企業は、具体的なリスクや対策、排出量目標などを開示することが一般的になっています。人的資本や多様性に関する情報では、女性管理職比率や男性の育休取得率、男女間賃金格差だけでなく、その背景や原因も説明することが必要です。

コーポレートガバナンスは、企業経営を監視する仕組みのことで、社外取締役や社外監査などの取り組みが含まれます。これにより、企業内での不正や問題を予防する効果があります。これらの情報開示は、企業の状況を投資家など外部の利害関係者に伝え、適切な投資判断ができるようにすることが目的です。

人的資本で情報開示する7分野・19項目

前述の有価証券報告書への記載事項のほかに、2023年3月以降、金融商品取引法第24条で有価証券報告書を発行する大手企業4,000社に対し、人的資本の情報開示が義務化されました。

政府が「人的資本可視化指針」において開示が望ましいとされている「7分野19項目」は次の通りです。

7分野 19項目
1. 人材育成に関する分野 1. リーダーシップ
2. 育成
3. スキル
2. エンゲージメントに関する分野 4. 従業員満足度
3. 流動性に関する分野 5. 採用
6. 維持
7. サクセッション
4. ダイバーシティに関する分野 8. ダイバーシティ
9. 非差別
10. 育児休業
5. 健康・安全に関する分野 11. 精神的健康
12. 身体的健康
13. 安全
6. 労働慣行に関する分野 14. 労働慣行
15. 児童労働、強制労働
16. 賃金の公正性
17. 福利厚生
18. 組合との関係
7. コンプライアンス・倫理に関する分野 19. コンプライアンス


情報開示を行う7分野・19項目について、詳しくは以下の記事をご参考ください。

「3P・5Fモデル」から考える企業が実践すべきこと

経済産業省で取りまとめられた報告書、通称伊藤レポート※では、人材戦略を策定するうえで3つの視点を持つことが重要だとしています。

※伊藤レポート・・・2014年8月に経済産業省が公表した報告書。 経済産業省が開催した「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書で、伊藤邦夫氏を座長にして作成された

「3P・5Fモデル」とは?

3P・5Fモデルとは、人材版伊藤レポートにてこれからの時代に必要とされる「3つの視点(3P)」と「5つの共通要素(5F)」から成る人材戦略のことです。

人材戦略に必要な3つの視点と5つの共通要素

ここでは、3つの視点と5つの共通要素についてお伝えします。

3つの視点

人材版伊藤レポートでは、人材戦略に必要な視点として次の3つを挙げています。

視点1:経営戦略と人材戦略の連動
たとえば経営戦略として海外展開を考えているなら、語学力のある人材を採用することで人材戦略との連動ができる

視点2:As is-To beギャップの定量把握
「As is=現在の姿」と「To be=理想の姿」のギャップをできるだけ数値化して、定量的に把握するという視点

視点3:企業文化への定着
ギャップを埋めるようにとった戦略がうまくいったのかどうか、企業文化への定着度をできるだけ数値で測り、将来を見越した人材戦略を再検討する

5つの共通要素

5Fは、業種を問わずいかなる企業でも共通して組み込むべき人材戦略の要素です。人材版伊藤レポートでは次の5つを挙げています。

要素1:動的な人材ポートフォリオ
適材適所の人材配置を重視し、企業の価値向上を図る

要素2:知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
従業員の多様性を認め、経験や専門性を有効活用すること

要素3:リスキル・学び直し
個人のスキルアップや専門性の向上を支援し、DXに対応する能力を育成すること

要素4:従業員エンゲージメント
従業員がやりがいを感じ、主体的に業務に取り組める環境を整えること

要素5:時間や場所にとらわれない働き方
柔軟な働き方を促進し、安全で安心な労働環境を整えること

【ツール紹介】人的資本経営で必要な人材スキルの可視化ができる「PHONE APPLI PEOPLE」の特長や機能とは

PHONE APPLI PEOPLE

導入企業

PHONE APPLI PEOPLE

従業員のスキルを可視化するためには、これらの情報を一元管理するツールが必要です。PHONE APPLI PEOPLEは、皆さんが連絡を取るために普段使いする電話帳、社内イントラネットのような用途で使われるサービスです。社内のメンバー同士のつながりを高めるために個々のメンバーが持つスキルや経験、パーソナリティ情報などを自己開示しあい、相互理解を深め、心理的な距離を縮めて、活発な協働を促すことが可能です。
さらに詳しい方法についてこちらの資料でも解説しております。資料ダウンロードは無料なのでぜひ、こちらをご覧いただけますと幸いです。

【事例紹介】キリンホールディングス株式会社|女性リーダー比率の目標30%、ダイバーシティ経営企業100選に選定

最後に、グループ共通の価値観"One Kirin Values"に「熱意」「誠意」「多様性」を掲げる、キリンホールディングス株式会社の事例をご紹介します。ぜひ自社の参考事例としてお役立てください

【引用】キリングループの人材戦略


キリンホールディングスは、女性活躍推進が優れた企業として経済産業省・東京証券取引所が共同で選定する「なでしこ」に選定されました。

2030年までに取締役会の女性割合を30%にする目標を掲げ、女性社員のキャリア支援やリーダー育成研修を実施しています。研修は、育児中の社員でも参加しやすい時間設定(10:00〜17:30)や、育児休業中でも申込みができるようにしています。これらの取り組みによって女性役員の比率は、2011年11.3%から2021年16.3%に上がりました。

また、2013年経済産業省が主催する「ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれました。多様性を広げる取り組みとして、多様性推進研修や男性の育児休業取得・家庭参画推進などを行っています。

【まとめ】人的資本経営について知っておくべきこと

本記事では、人的資本経営について以下のポイントを中心に解説しました。

  • 人的資本経営は、人材を育成しスキルを最大限に活かすことで、中長期的な企業価値を高めることを目的としている
  • 人材育成を通して従業員のスキルや能力を把握しやすくなるため、適切な人材配置が可能になる
  • 従業員のスキルアップを促すことで、モチベーションの向上や離職率の低下など、エンゲージメントの向上にもつながる

これからの時代において、企業が成長するために、人材を大切にする人的資本経営が要となります。人材の育成と強化が企業の競争力アップにつながっていくでしょう。本記事の内容が、人的資本経営にお役立ちできることを願っています。

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