社用携帯の位置情報はどこまで許される?メリットとプライバシー配慮のポイントを解説
企業のコンプライアンス強化や業務効率化の一環として、社用携帯の位置情報を活用する動きが広がっています。営業担当者の行動管理や災害時の安否確認など、そのメリットは大きい一方で、「従業員を監視しているようで気が引ける」「どこまでが合法なのか分からない」といった不安を抱える担当者の方も多いのではないでしょうか。
適切なルールを設けずに位置情報を取得すると、プライバシーの侵害にあたる可能性があり、従業員との信頼関係を損なうことにもなりかねません。
この記事では、社用携帯の位置情報を活用する際のメリットや注意点、そして従業員に配慮した適切な運用方法について詳しく解説します。
【この記事でわかること】
社用携帯の位置情報で何ができるのか?
社用携帯の位置情報(GPS機能)を活用することで、単に従業員の居場所が分かるだけでなく、様々な業務上のメリットに繋がります。具体的にどのようなことが可能になるのか、主な活用例を見ていきましょう。
従業員の現在地のリアルタイム把握
位置情報機能を使えば、管理者は従業員が今どこで業務を行っているかをリアルタイムで把握できます。これにより、例えば顧客から急な問い合わせがあった際に、最も近くにいる営業担当者を向かわせるなど、迅速かつ効率的な対応が可能になります。
訪問ルートの最適化と業務効率化
各従業員の移動履歴や滞在時間を記録・分析することで、非効率な移動ルートを発見し、改善に繋げることができます。日々の訪問計画を最適化し、移動時間を削減することで、顧客との商談時間をより多く確保することが可能となり、生産性の向上に貢献します。
正確な勤怠管理の実現
位置情報を活用すれば、従業員が特定のエリア(例えば取引先のオフィス)に到着した時刻や出発した時刻を自動で記録することができます。これにより、自己申告に頼らない客観的で正確な勤怠管理が実現し、直行直帰の際も出退勤時刻を正確に把握できます。
紛失・盗難時のセキュリティ対策
万が一、社用携帯を紛失したり盗難に遭ったりした場合でも、位置情報機能によって端末の現在地を特定できます。
遠隔で端末をロックしたり、データを消去したりする機能(MDM:モバイルデバイス管理)と組み合わせることで、重要な顧客情報や機密情報の漏洩を防ぐ強力なセキュリティ対策となります。
企業が社用携帯の位置情報を取得する4つのメリット
社用携帯の位置情報を活用することは、企業にとって多くのメリットをもたらします。ここでは、代表的な4つのメリットについて具体的に解説します。
メリット |
具体的な内容 |
生産性の向上 |
営業活動が可視化され、移動ルートの最適化や迅速な顧客対応が可能になることで、組織全体の生産性が向上します。 |
労務管理の効率化 |
出退勤時刻や訪問先での滞在時間が自動で記録されるため、勤怠管理にかかる手間と時間を大幅に削減できます。 |
BCP対策の強化 |
地震や豪雨などの災害発生時に、従業員の安否確認を迅速かつ正確に行うことができ、事業継続計画(BCP)の実効性を高めます。 |
セキュリティ強化 |
端末の紛失や盗難時に、位置特定やリモートロック、データ消去などを行うことで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えます。 |
営業活動の可視化による生産性の向上
営業担当者の行動がデータとして可視化されることで、より効果的な営業戦略の立案に繋がります。
例えば、成約率の高いエリアや顧客への訪問頻度を分析し、リソースを集中させるといった判断が可能になります。また、個々の担当者の行動を客観的に把握できるため、適切なフィードバックや指導が行いやすくなります。
勤怠・労務管理の負担軽減
直行直帰やテレワークなど多様な働き方が広がる中で、勤怠管理は複雑化しています。位置情報を活用すれば、従業員の労働時間を客観的なデータに基づいて管理できるため、サービス残業の防止や長時間労働の是正に繋がります。
これにより、労務管理の負担が軽減されるだけでなく、コンプライアンスの強化にも貢献します。
災害時など緊急時の迅速な安否確認
地震などの自然災害や、業務中の事故といった緊急事態が発生した際に、従業員の安否を確認することは企業の重要な責務です。
社用携帯の位置情報を把握できていれば、従業員がどこにいるかを迅速に特定し、安否確認や救助要請などをスムーズに行うことができます。
端末紛失時の情報漏洩リスクの低減
社用携帯には、企業の機密情報や多数の顧客情報が保存されています。端末の紛失は、重大な情報漏洩事故に直結する可能性があります。
位置情報サービスとMDMツールを連携させることで、紛失した端末の追跡、遠隔でのロックやデータ消去が可能となり、セキュリティリスクを大幅に低減させることができます。
知っておくべきデメリットとプライバシーのリスク
社用携帯の位置情報活用はメリットが多い一方で、導入には慎重な検討が必要です。特に、従業員のプライバシーへの配慮を怠ると、大きなトラブルに発展する可能性があります。
従業員からの心理的な反発
従業員の視点から見ると、常に自分の居場所を会社に把握されている状況は、「監視されている」という圧迫感や不信感に繋がる可能性があります。このような心理的な負担は、仕事へのモチベーション低下を招き、生産性をかえって下げてしまう恐れがあります。
プライバシー侵害による法的リスク
最も注意すべき点が、プライバシー侵害のリスクです。業務時間外にまで位置情報を取得し続けるなど、社会通念上、相当とされる範囲を超えた監視は、プライバシー権の侵害として違法と判断される可能性があります。従業員から損害賠償請求をされるといった、法的な紛争に発展するリスクも念頭に置く必要があります。
監視が目的化することによる信頼関係の悪化
位置情報の活用は、あくまで業務効率化や安全確保が目的であるべきです。
しかし、従業員の行動を細かく監視し、管理を強化すること自体が目的になってしまうと、従業員との信頼関係は大きく損なわれます。性悪説に基づいた管理は、組織のエンゲージメントを低下させる要因となります。
ツールの導入・運用コストの発生
位置情報を管理するためのツール(MDMなど)の導入には、初期費用や月額のランニングコストが発生します。
また、これらのツールを運用管理するための人的コストも必要です。得られるメリットと、発生するコストのバランスを十分に比較検討することが重要です。
社用携帯の位置情報取得は違法?合法と判断される境界線
企業が従業員の位置情報を取得する行為は、使い方を誤ると違法になる可能性があります。ここでは、どのような場合に合法と判断され、どこからが違法と見なされるのか、その境界線について解説します。
原則として業務時間内の取得は合法的
会社の指揮命令下にある業務時間内において、業務上の必要性から位置情報を取得することは、基本的に合法的とされています。
例えば、外回りの営業担当者の業務状況を把握したり、運送トラックの現在地を確認したりする目的であれば、正当な業務の範囲内と判断されやすいです。
業務時間外の取得はプライバシー侵害にあたる可能性
注意が必要なのは、業務時間外の取り扱いです。
休憩時間や終業後、休日など、労働から解放されている時間帯に従業員の位置情報を取得し続けることは、プライバシーの侵害と見なされる可能性が非常に高いです。従業員の私生活を監視することになり、違法と判断されるリスクがあります。
位置情報を取得する目的の明確化が不可欠
なぜ位置情報を取得する必要があるのか、その目的を具体的かつ明確に定めることが極めて重要です。「勤怠管理のため」「災害時の安否確認のため」「顧客への迅速な対応のため」など、業務上の合理的な理由がなければなりません。
「なんとなくサボっていないか監視したい」といった曖昧で不当な目的での利用は認められません。
従業員への十分な説明と同意の重要性
位置情報を取得する際には、その目的、取得する情報の範囲、時間帯などを従業員に対して丁寧に説明し、明確な同意を得ることが不可欠です。
同意を得ないまま一方的に位置情報を取得すると、プライバシー侵害や個人情報保護法違反を問われる可能性があります。就業規則への記載だけでなく、説明会を実施するなど、従業員の理解を得るための努力が求められます。
トラブルを避けるための位置情報活用ルール設定のポイント
従業員との無用なトラブルを避け、安心して位置情報活用制度を運用するためには、明確なルール作りが欠かせません。以下のポイントを押さえて、適切な運用体制を構築しましょう。
ルール設定のポイント |
具体的なアクション |
就業規則への明記 |
位置情報を取得する旨、その目的、範囲、時間帯などを就業規則に具体的に記載し、全従業員に周知します。 |
目的・範囲の限定 |
業務上、本当に必要な範囲に限定します。例えば、取得は業務時間中のみとし、休憩時間や休日は対象外とすることを明確にします。 |
管理体制の整備 |
取得した位置情報にアクセスできる権限者を限定し、目的外利用が行われないよう、管理責任者を定めて厳格に運用します。 |
同意取得の徹底 |
従業員一人ひとりから、ルールについて説明した上で同意書を取得するなど、同意を得たことを客観的に証明できる形で記録を残します。 |
就業規則への明記と周知徹底
位置情報を取得する可能性があることを、就業規則に明記することは必須の対応です。なぜ導入するのかという目的と共に、いつ、どのような方法で位置情報を取得するのかを具体的に記載し、従業員がいつでも閲覧できる状態にしておきましょう。
位置情報を取得する目的・時間・範囲を限定する
ルールの実効性を高めるためには、内容をできるだけ具体的に定めることが重要です。
「業務時間中」と定めるだけでなく、例えば「午前9時から午後6時まで」のように具体的な時間を明記します。また、「営業活動の効率化」といった目的を達成するために必要な範囲に限定し、それ以上の情報を取得しないことを明確にします。
取得した情報の管理責任者を明確にする
取得した位置情報は、個人情報として厳重に管理する必要があります。誰がその情報にアクセスできるのか、管理責任者は誰なのかを明確に定め、不正な閲覧や目的外利用を防ぐ体制を構築してください。アクセスログを記録するなどの技術的な対策も有効です。
従業員の同意を適切な形で取得する
就業規則に記載するだけでなく、従業員一人ひとりに対して丁寧に説明を行い、個別に同意を得ることが最も望ましい対応です。説明会を開催したり、同意書を取り交わしたりすることで、従業員の納得感を醸成し、後のトラブルを未然に防ぐことができます。
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まとめ
社用携帯の位置情報活用は、業務効率化やセキュリティ強化に大きく貢献する一方で、プライバシーへの配慮を欠くとリスク要因にもなり得ます。重要なのは、導入目的を明確にし、従業員に対して誠実な説明と同意取得を行うことです。
適切なルール設定と運用体制を構築し、会社と従業員の双方が納得できる形で位置情報を活用することで、信頼関係を損なうことなく、組織全体のパフォーマンス向上を目指してください。


