近年、多くの企業で導入が進んでいる「1on1ミーティング」。しかし、「いざ実施するとなると、どう進めればいいのか分からない」「雑談だけで終わってしまい、効果を実感できない」といった悩みを抱える管理職の方も多いのではないでしょうか。

1on1ミーティングは、従来の評価面談とは異なり、部下の成長を促し、信頼関係を築くための重要なコミュニケーションの場です。

この記事では、1on1ミーティングの基本的な進め方から、効果を高めるための具体的なテーマやポイントまで、分かりやすく解説します。

1on1ミーティングの目的とは？

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行う対話のことです。部下が抱える課題の解決やキャリア形成の支援、心身のコンディションの確認など、部下の成長をサポートすることを主な目的としています。

部下の成長を促すための対話の時間

1on1ミーティングの主役は、あくまで部下です。上司が一方的に指示や評価を伝える場ではありません。

部下が話したいことを自由に話せる心理的安全性の高い環境を作り、対話を通じて部下自身が課題に気づき、解決策を見つけられるように支援することが、上司に求められる最も重要な役割です。このプロセスを繰り返すことで、部下の主体性や自律的な成長を促します。

評価面談との目的の違い

1on1ミーティングと評価面談は、目的や位置づけが大きく異なります。評価面談は、過去の実績や成果に対して評価を下すことが主な目的であり、話の主体は上司になりがちです。

一方で、1on1ミーティングは未来志向であり、部下の成長やキャリアについて共に考える時間です。評価を気にすることなく、部下が本音で話せる場であることが重要です。

なぜ今1on1ミーティングが重要なのか？

現代のビジネス環境において、1on1ミーティングの重要性はますます高まっています。その背景には、働き方の変化や人材の流動化といった社会的な要因が関係しています。

働き方の多様化とコミュニケーションの変化

リモートワークやハイブリッドワークが普及したことで、上司と部下が直接顔を合わせる機会が減少しました。これにより、以前はオフィスでの雑談などから把握できていた部下の些細な変化や悩みに気づきにくくなっています。

定期的な1on1ミーティングは、こうしたコミュニケーション不足を補い、部下の状況をきめ細かく把握するための貴重な機会となります。

人材の定着とエンゲージメント向上

終身雇用が当たり前ではなくなり、人材の流動性が高まる中で、企業にとって優秀な人材の定着は重要な経営課題です。

部下一人ひとりと向き合い、キャリアや成長を支援する姿勢を示すことは、社員のエンゲージメント（会社への愛着や貢献意欲）を高め、離職率の低下につながります。1on1ミーティングは、まさにそのエンゲージメントを育むための土壌となるのです。

1on1ミーティングがもたらす3つのメリット

適切に1on1ミーティングを実施することは、部下、上司、そして組織全体に多くのメリットをもたらします。ここでは、代表的な3つのメリットを紹介します。

部下の主体的な成長を促進する

1on1ミーティングでは、上司からの問いかけを通じて、部下自身が自分の考えを深掘りし、課題や目標を言語化します。上司に答えを教えてもらうのではなく、自ら解決策を考えるプロセスを繰り返すことで、部下の主体性が養われ、自律的に行動できる人材へと成長していきます。

上司と部下の信頼関係を深める

定期的に対話の時間を設けることで、業務上の連絡だけでは伝わらないお互いの人柄や価値観への理解が深まります。

上司が自分のために時間を作って真剣に話を聞いてくれるという経験は、部下の安心感につながり、強固な信頼関係の基盤となります。「この上司になら本音で相談できる」という関係性は、日々の業務を円滑に進める上でも大きな力となります。

離職防止とモチベーション向上につながる

1on1ミーティングを通じて、上司は部下が抱える業務上の困難や人間関係の悩み、キャリアへの不安などを早期に察知できます。問題が深刻化する前に対処することで、部下の不満やストレスを軽減し、離職を防ぐ効果が期待できます。

また、自分の成長やキャリアについて上司が真剣に考えてくれることは、部下の仕事に対するモチベーションを高めることにも直結します。

効果的な1on1ミーティングの進め方【5ステップ】

1on1ミーティングを意味のある時間にするためには、場当たり的に行うのではなく、しっかりとした流れに沿って進めることが重要です。ここでは、事前準備から事後フォローまでを5つのステップに分けて解説します。

Step1：目的の共有とテーマの準備（事前）

まず、部下に対して1on1ミーティングの目的を事前に伝えておきましょう。「評価の場ではなく、あなたの成長をサポートするための時間である」ことを明確にすることで、部下は安心して臨むことができます。

その上で、部下自身に「話したいこと」「相談したいこと」をテーマとして考えてもらうよう促します。事前にアジェンダを共有してもらうと、上司も心の準備ができ、より深い対話につながります。

Step2：アイスブレイクと現状確認（序盤）

ミーティングの冒頭は、いきなり本題に入るのではなく、軽い雑談（アイスブレイク）から始めましょう。体調やプライベートの近況など、リラックスできる話題で場の空気を和らげることが大切です。

その後、前回の1on1で決めたアクションプランの進捗状況などを確認し、自然な流れで本題に入っていきます。

Step3：傾聴と問いかけによる深掘り（中盤）

ここが1on1ミーティングの核となる部分です。上司は聞き役に徹し、部下の話に真摯に耳を傾ける「傾聴」の姿勢を徹底します。

話の途中で遮ったり、自分の意見を押し付けたりすることは避けましょう。部下の話を十分に聞いた上で、「なぜそう思うの？」「具体的にはどういうこと？」といった質問を投げかけ、部下自身が考えを深められるようにサポートします。

Step4：ネクストアクションの設定（終盤）

対話を通じて課題や目標が明確になったら、ミーティングの最後には必ず具体的な「次の行動（ネクストアクション）」を決めましょう。

「頑張ります」といった曖昧な結論で終わらせず、「次回のミーティングまでに、まず〇〇を試してみる」というように、具体的で実行可能な小さな一歩を設定することが重要です。このネクストアクションも、上司が指示するのではなく、部下が自ら決められるように導きましょう。

Step5：内容の記録と振り返る（事後）

ミーティングで話した内容や決定したネクストアクションは、必ず記録に残しましょう。記録は、次回のミーティングで振り返る際に役立つだけでなく、部下の成長の軌跡を可視化する貴重な財産となります。記録は上司と部下の双方で共有し、いつでも見返せるようにしておくことが望ましいです。

1on1ミーティングで話すテーマの具体例

「部下にテーマを考えてもらうように伝えても、なかなか出てこない」というケースも少なくありません。その場合は、上司からテーマの選択肢を提示してあげるのも一つの方法です。

業務の課題や目標に関するテーマ

日々の業務に関するテーマは、最も基本的で話しやすい内容です。仕事の進捗状況だけでなく、その中で感じている課題や改善点、目標達成に向けた戦略などを一緒に考えます。

• 「今、一番時間を取られている業務は何ですか？」
• 「目標を達成するために、何かサポートできることはありますか？」
• 「最近の仕事で、うまくいったと感じることは何ですか？」

キャリアや成長に関するテーマ

中長期的な視点で、部下のキャリアプランや成長について話すことも重要です。部下がどのようなスキルを身につけたいのか、将来どのような役割を担いたいのかを理解し、その実現に向けた支援を考えます。

• 「今後、どんな仕事に挑戦してみたいですか？」
• 「3年後、どんな自分になっていたいですか？」
• 「今の仕事を通じて、どんなスキルが身についていると感じますか？」

人間関係やコンディションに関するテーマ

職場の人間関係や、プライベートも含めた心身のコンディションについて話すテーマです。これらのテーマはデリケートな内容を含むため、信頼関係が構築できていることが前提となりますが、部下のエンゲージメントに大きく影響する重要な要素です。

• 「チームのメンバーとうまく連携は取れていますか？」
• 「最近、睡眠はしっかりとれていますか？」
• 「仕事とプライベートのバランスはうまく取れていますか？」

1on1ミーティングを成功させるためのポイント

最後に、1on1ミーティングの効果を最大化するための3つの重要なポイントを解説します。これらの心構えを持つことで、ミーティングの質は大きく向上します。

主役は部下！上司は聞き役に徹する

繰り返しになりますが、1on1ミーティングの主役は部下です。上司は自分の話したいことを話すのではなく、部下の話を聞くことに全体の7〜8割の時間を使うくらいの意識を持ちましょう。

アドバイスをしたくなる気持ちをぐっとこらえ、まずは部下の考えや感情をすべて受け止めることが信頼関係の第一歩です。

否定せず、まずは受け止める姿勢を持つ

部下の意見が、たとえ上司の考えと異なっていたとしても、「でも」「それは違う」といった否定的な言葉から入るのは絶対に避けましょう。

まずは「なるほど、そういう考え方もあるね」「そう感じているんだね」と一度受け止める（肯定する）ことが大切です。この受容的な姿勢が、部下が安心して本音を話せる心理的安全性を育みます。

定期的に継続して実施する

1on1ミーティングは、一度実施しただけで劇的な効果が生まれるものではありません。週に1回、あるいは月に1回でも良いので、定めた頻度で継続的に実施することが何よりも重要です。

忙しい業務の中でも時間を確保し、部下との対話を習慣化することで、少しずつ信頼関係が醸成され、部下の成長という形で成果が現れてきます。

1on1ツールを活用する

1on1ミーティングを効果的に進めるための手段として、専用の1on1ツールを活用することは非常に有効です。Excelやスプレッドシートでの管理には限界があり、過去の対話ログを探すのに手間取ったり、共有設定が煩雑になったりすることがあります。

専用ツールを導入することで、前回の面談内容を瞬時に振り返ることができるため、話の腰を折らずにスムーズな対話が可能になります。「前回話していたあの件はどうなった？」と自然に切り出せることは、部下への関心を示す上でも重要です。

また、多くのツールには「トピック例」や「質問テンプレート」が用意されています。これにより、「何を話せばいいかわからない」という沈黙の時間を防ぎ、部下の本音を引き出すための問いかけがしやすくなるでしょう。さらに、部下のコンディションを可視化する機能がついているツールであれば、メンタル不調の兆候を早期に発見できる可能性も高まります。

アナログな管理による負担を減らし、対話そのものに集中できる環境を作ることが、1on1の質を向上させる近道となります。

コミュニケーションポータル「PHONE APPLI PEOPLE」とは

「ヒトのつながり」を高め、組織を強くするコミュニケーションポータル「PHONE APPLI PEOPLE」。メンバー同士がお互いを理解し最適なコミュニケーションをとることにより心理的な距離を縮めて、活発な協働を促します。

「PHONE APPLI PEOPLE」には、次のような機能が標準搭載されています。

「PHONE APPLI PEOPLE」とは！

ヒトのつながりを高め組織を強くするコミュニケーションポータルです。メンバー同士がお互いを理解し最適なコミュニケーションをとることにより心理的な距離を縮めて、活発な協働を促します。

サービスサイトを見る

まとめ

1on1ミーティングは、単なる面談ではなく、部下の成長を促し、強い信頼関係を築くための強力なツールです。

効果的な進め方のステップを理解し、部下を主役にするという基本姿勢を忘れずに実践することで、部下のパフォーマンスとエンゲージメントは確実に向上します。今回紹介した内容を参考に、ぜひ明日からの1on1ミーティングの進め方を見直し、より有意義な時間にしてください。