企業がリスキリングを導入するメリット5つ|デメリットや導入ステップも紹介

- リスキリングを導入したいが、うまくいくか不安
- メリットやデメリットを押さえたうえで検討したい
- リスキリングの導入ステップを知りたい
リスキリングとは、社会の変化に対応するために、デジタルに関するスキルを学び直すことをいいます。企業が従業員に対してリスキリングを施すことで、DX化の促進や競争力の向上が可能です。
しかしながら、何のためにリスキリングを行うのか、自社にとって何のメリットがあるのか、イメージを掴めていない人もいるかと思います。そこで本記事では、リスキリングについて次の項目を解説します。
- 【この記事でわかること】
- リスキリング導入で得られるメリット
- リスキリングが注目される背景
- リスキリングの導入ステップ
本記事でリスキリングへの理解を深め、自社のDX化や事業拡大につなげましょう。
企業がリスキリングを導入するメリット5つ
企業がリスキリングを導入するメリットとして、以下の5つがあげられます。
- デジタル人材不足に対応できる
- エンゲージメント向上につながる
- 業務効率化や生産性向上につながる
- 人事採用のコストを抑制できる
- 新たなアイデアが生まれやすくなる
1.デジタル人材不足に対応できる
少子高齢化にともなう生産年齢人口(15歳から65歳未満の人)の減少によって、企業における人材不足は大きな社会問題となっています。
なかでもDX化やAIの進歩など、めまぐるしく変化するIT業界において、高いスキルをもつIT人材の確保は喫緊の課題です。
そこで企業が従業員に対してリスキリングを導入すれば、考え方を「新しく人材を採用する」から「今いる人材にIT知識やスキルを身につけてもらう」にシフトできます。社内人材だけでカバーできるので、人材不足解消につながります。
2.エンゲージメント向上につながる
リスキリングでは、知識やスキルを身につけてもらうため従業員に投資します。
たとえば、社内でITに関する学習機会を提供したり、ジョブポスティング(部署が必要とする仕事やポストを明示して社内募集すること)の環境を整えたりとさまざまです。
従業員もスキルアップによって成長を実感できたり、仕事に対する自信がついたりと、エンゲージメント向上につながります。結果、仕事の質が高まり、顧客満足度も高まりやすくなります。
3.業務効率化や生産性向上につながる
リスキリングによってDX化が進めば、作業の自動化によって工数が大幅に削減されます。業務が効率化された結果、生産性が高まり、既存事業の拡大や新規事業の開発などに投資できるようになります。
また業務効率化によって、労働環境の改善も可能です。作業時間が短縮されることで残業時間が削減されれば、従業員の負担も軽減されるでしょう。
4.人事採用のコストを抑制できる
リスキリングでは、社外から新たな人材を採用するのでなく、既存の従業員に知識やスキルを学んでもらい、人材確保につなげます。
人材不足が解消されるとともに、「人材配置の最適化」もできるため、採用コスト削減が可能です。どのような仕事にどの程度人材が必要なのか可視化し、それを社内人材でカバーすることで、採用コストを抑えられます。
5.新たなアイデアが生まれやすくなる
リスキリングによって従業員の知識やスキルがアップデートされれば、視野が広がり、新たなアイデア創出につながります。新規事業やプロジェクトが生まれ、企業の利益拡大にもつながるでしょう。
また、リスキリングを行うことで従業員の主体性も磨かれます。「もっと学びたい」「新しいスキルを身につけたい」という従業員が増えれば、組織全体の士気も高まります。
リスキリングが注目されるようになった背景
なぜ日本企業でリスキリングが注目されるようになったのか、その背景についてお伝えします。
1.DX推進のためのデジタル人材不足
大きな理由として、DXの推進があげられます。企業におけるDXでは、新たなシステムの導入・構築やデータ分析の活用などが主な内容です。
DX化を進めるためには、プログラミングやデザイン、データサイエンスなど、相応のITスキルが求められます。しかしながら、「ITスキルの高い従業員がいない」「従業員によってITリテラシーにばらつきがある」といった企業も少なくありません。
企業がDXを実現するためには、まず従業員のITスキルを高める、つまりリスキリングを行う必要があるのです。
2.日本政府によるリスキリング支援注力
もう一つの理由に、「日本政府がリスキリングを推進しているから」があります。経済産業省は定期的に「デジタル時代の人材政策に関する検討会」を行っており、企業がどのようにデジタル人材を確保するかの議論が重ねられています。
さらに政府は企業に対して、人材をコストでなく資本として捉える「人的資本経営」も推進。同経営における重要項目をまとめた「人材版伊藤レポート2.0」も公開され、項目に「リスキル・学び直し」の項目があります。企業はこの項目にならってリスキリング施策を行う必要があります。
リスキリングを導入するデメリットと解決策
リスキリングを導入するデメリットとして次のものがあげられます。以下では解決策も紹介しているので、ご参考ください。
- リソースや費用面の負担が大きい
- 優秀な人材が流出しやすい
- 従業員のモチベーション維持が困難になる
1. リソースや費用面の負担が大きい
リスキリングは、ただ単にeラーニングを導入したり、研修を行ったりすれば良いわけではありません。従業員が高度なIT人材になるには、質の高い教育を施す必要があります。
企業はどのようなスキルが必要か、誰に対して行うのか、アウトソース先をどうするか、などを考えなければならないので、自社にとっての負担も大きいです。リスキリングにおける資格取得や外部での研修費用なども自社負担となります。
リスキリングの目的を明確にし、予算や社内リソースを綿密に想定することが重要です。
2. 優秀な人材が流出しやすい
リスキリングによって新たな知識・スキルを身につけた従業員が、キャリアアップとして転職してしまう可能性があります。
人材流出を防ぐためにも、給与や待遇、人材配置を見直しましょう。社内に居続けてもキャリアアップができ、かつ満足度の高い環境を整えることが大切です。
3. 従業員のモチベーション維持が困難になる
新しいことを学んだり、スキルを身につけたりすることが、従業員にとってストレスになる可能性もあります。
DXに対応するためには高度なITスキルが求められるため、ストレスがかかり、モチベーション維持ができない従業員が出てくるかもしれません。
せっかくスキルを身につけても仕事で使われなかった場合、「意味がない」と思われてしまう可能性が高いです。給与や待遇、人材配置なども考慮しながら、スキルをアウトプットできる環境整備が必要です。
リスキリング導入の基本5ステップ
リスキリング導入の基本的なステップは以下のとおりです。各ステップについて1つずつ解説します。
- 事業戦略に必要なスキルを決める
- 教育プログラムを決める
- リスキリングの重要性を浸透させる
- 従業員が学習を進める
- リスキリングしたことを実践で活かす
1. 事業戦略に必要なスキルを決める
まずは、リスキリングを行うにあたって必要なスキルを決めましょう。基本的には事業戦略をもとに、それに沿ってスキルを明確にします。スキルの例として以下のものがあげられます。
- DX・デジタルに関する基本的な知識
- プログラミング言語、データ分析
- プロジェクト管理ができるディレクションスキル
上記スキルに加えて、「人物像」も明確にしましょう。たとえば学習意欲が高い、失敗から立ち直るのが早い、リーダーシップがあるなどです。リスキリングに合った社内人材を見定めましょう。
2. 教育プログラムを決める
スキルの内容が定まったら、具体的な教育プログラムを決めましょう。次のポイントを意識すると、行うべきプログラムが見えやすくなります。
- 従業員のスキルレベルはどの程度か
- 知識やスキルがどこまで到達すれば成功か
- 使える社内リソースはどのくらいか
従業員のスキルレベルを把握し、目標を設定します。予算やリスキリング実施担当者の工数なども踏まえたうえで、現状実施できるプログラムを策定しましょう。
3. リスキリングの重要性を浸透させる
リスキリングの重要性の浸透は、もっとも大切なプロセスといえます。そもそも、せっかく自社として抜擢したのに、従業員に当事者意識がない場合、モチベーションが生まれません。重要性を浸透させる方法としては次のものがあげられます。
- 全社で行うのでなく社内公募で人材を絞る
- 1on1ミーティングで対象者と密にコミュニケーションを取る
- 学んだスキルを活かせる環境を整備する
何となく全社でリスキリングを行うのでなく、「学びたい人」「意欲の高い人」を募集した方が、モチベーションの高い従業員が集まりやすいです。
対象者が決まった後も、1on1でリスキリングの内容や本人のキャリア感などをすり合わせましょう。本人が学んだスキルを活かせる環境を用意することも重要です。
4. 従業員が学習を進める
プログラムが決まったら、実際に従業員に取り組んでもらいます。ここで注意したいのが、従業員にとって新しい知識やスキルの学習は負荷がかかる、ということです。
従業員のモチベーションを阻害しないよう、学習を強制するのでなく、本人の意思を尊重しましょう。
5. リスキリングしたことを実践で活かす
リスキリングは、DX推進や事業拡大のための「手段」であって、「目的」ではありません。せっかく高い技術力を身につけたのに、それを社内で活かせる場がなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。
自社として、従業員が学んだことを活かせる機会を用意し、行動の結果に対するフィードバックも丁寧に行いましょう。
【事例紹介】あおぞら銀行|社長含む全行員約2,000人にDX教育を開始、社員のエンゲージメント向上も強化

引用元:あおぞら銀行
あおぞら銀行では、「企業価値の持続的向上」を目的に、社内の約2,000人に対してリスキリングを実施。2021年度からDX人材の育成を行っている同社。全社向けの「スタンダードコース」、選抜者向けの「アドバンスコース」、第一線で活躍するためのコースを用意しています。
全社向けのコースでは、ITパスポートや統計検定など資格取得を目標とした研修やeラーニングを実施。選抜者向けのコースでは、データ分野やBPR(業務プロセスの変革)など、スキルを活用しやすい分野での教育を行っています。
2022年下期には、ビジネススクールと共同で人材育成プログラムを実施。社内の60名弱がプログラムを受け、スキルアップを図っています。
【ツール紹介】人的資本経営で必要な人材スキルの可視化に役立つ「PHONE APPLI PEOPLE」の特長や機能とは
従業員のスキルを可視化するためには、これらの情報を一元管理するツールが必要です。
PHONE APPLI PEOPLEは、皆さんが連絡を取るために普段使いする電話帳、社内イントラネットのような用途で使われるサービスです。
社内のメンバー同士のつながりを高めるために個々のメンバーが持つスキルや経験、パーソナリティ情報などを自己開示しあい、相互理解を深め、心理的な距離を縮めて、活発な協働を促すことが可能です。
さらに詳しい方法についてこちらの資料でも解説しております。資料ダウンロードは無料なのでぜひ、こちらをご覧いただけますと幸いです。
【まとめ】企業がリスキリングを推進するメリットについて
本記事では、企業がリスキリングを推進するメリットについて、以下のポイントを中心にお伝えしました。
- リスキリングには、デジタル人材不足の解消やエンゲージメント、生産性向上などのメリットがある
- 実施にあたって社内リソースや費用面の負担が大きいので、失敗しないためにも綿密に計画が重要
- 従業員のモチベーション維持のためにリスキリングの重要性を浸透させ、従業員が学んだスキルを活かせる場を用意する
リスキリングは、企業におけるデジタル人材不足を解消するために有効な手段です。しかしながら、決して簡単ではなく、綿密な計画や従業員のモチベーションコントロールが求められます。
本記事の内容が、自社のリスキリング導入にお役立ちできることを願っています。